最終話

「てか、お前出てけヨ」
「出ていかねぇ。テメーが思ってる事いうまで、ココからうごかねぇ」
「話す事なんか何も無いアル!!」
「じゃあ、あの指輪はなんでィ。別れたんなら、捨てりゃあいい。」
「あ、あれは・・」

思わず、神楽は布団をギュッと握る。捨てりゃあいい・・。確かにそうだ。未練たらしく元彼のくれた指輪など
持つほうがおかしい。なんで持ってるか・・・なんて答えは分かってる。
総悟の顔が見れない。自分がどんな顔をしてるのか分からない・・。
言葉が出てこない

嬉しかった。大好きだった。
今もこんなに好きなのに・・・捨てられるわけ・・なかった
自分の前には大好きだった彼。自分から出した答えに、何度後悔したか分からない。言わなきゃよかった。
何度思ったか分からない。指輪を見るたび、貰えた時の嬉しい気持ちと、もう居ない存在への空っぽな心がどんどん同じように溢れていった。何も口を開かない神楽。
総悟は、ほんの少しの希望があった。捨てられてなかった指輪。
いやでも期待した。黙ってる神楽が、どんな気持ちで口を開かないのかが不安なのは変わらなかったけれど・・

「テメーが、俺の事全然好きじゃねぇーみたいで、心配で、妬かせる事を全部やった
やりすぎたって分かってらぁ。本当に、すまなかった」

神楽は、目を見張った。コイツが。
頭を下げる事が極端に嫌うコイツ。どSで、いつも自身たっぷりで。人を陥れようとしか考えない総悟が・・・
自分の目の前には、頭を深く下げ、大好きだった栗色のサラサラの髪がユラユラと揺れている

「き、嫌いじゃなかった・・・アルカ?」
神楽は、やっと口を開く事が出来た。
「その反対でさぁ。好き過ぎて、嫉妬心でどうにかなりそうだった。全然笑わねぇし、機嫌わるそうで、キスも嫌がられて・・。どうにかなっちまいそうだった」

「は、恥ずかしかったダケヨ・・嫌いになんてなるわけ無いダロ」
神楽は、いままで思ってた事をぶつけるように、言葉が次から次へと出てきた
自分はこんなにも溜めていて、こんなにもコイツに話したかったんだとでも言う様に

「指輪は恥ずかしくて・・・首に。放課後も一緒に居るのが嬉しかったアル。好きって・・言われたとき・・・ちゃんと言ったネ。小さい声だったけど。お前が聞き取れなかっただけアル。それなのに・・おまえ・・他の・・っ」

神楽の目には、涙が溢れそうだった。下まつげの上には、涙がいつ落ちるか分からないほどに、たっぷりと乗っている。その下まつげが、とうとう重さに耐え切れなくなり、一粒ポロっとこぼれた瞬間、待ってたように涙は堰をきって溢れ出した。特に声を出す事もせず、ただただ、神楽は黙って涙を流していた。涙のみ頬に伝わり、布団の上で握られている手に一つ・・又一つと落ちてきた。




挿絵協力 いの様 ありがとうございました★


嫉妬心・・・。それで。たったそれだけであそこまでやるのかと・・。神楽はぐちゃぐちゃの頭を一生懸命落ち着かそうとする。総悟のした事は、今でも許せない。やり方が間違ってると思う。でも、本当は自分が、ちゃんと態度に表さなかった事が原因かもしれない。

幾度となく、総悟は、神楽に問いかけた。意思表示を示した。それを恥ずかしいと言う理由で頑なに拒んだのは、紛れもなく自分だった。

気付くと、自分に総悟が抱きついてるのが分かった
「俺の事・・好きですかィ?」  
「あたり・・前ネ」
「違いまさぁ。俺はちゃんと聞きてぇ」   
「っ・・き」   
「駄目でさぁ」
「そーごが・・大・・好き・・」
よほど恥ずかしかったのか、総悟の胸に顔を渦もらせている

沖田は言い得る事の出来ない感情に囚われた。自分のずっと・・ずっと聞きたかった言葉
自分の奥底から確実に上がってくるモノ。それは形容しずらく、形では表せないもの。しかし、心臓が高鳴り、早くなるのは分かる。歓喜しているのは分かる。この2ヶ月。触れたくてたまらなかった。何度頭の中で考えたか分からない。何度時間を戻してほしいと、普段信じない神様とやらに願ったか分からない。自身の腕に抱いているもの。顔を渦もらせている人。思考回路はパンクしそうだった。
感情が高ぶり、平常心を保つのは難しくなる。ずっとずっと・・スキだった。

ゆっくり、神楽の顔を上げる
顔を近づける。いままで幾度となく止められた。しかし、今はすんなりと受け入れてくれる
愛しくて、力をいれれば、容易く壊れそうなかぐらの体
ゆっくり、舌をいれる。すると、たどたどしく、神楽の舌が総悟の舌に絡み合う
ドクンと体から響いた。こんなキス。初めてだった
今まで聞いたことない神楽の声。甘く甘美な声は、自分だけの物

「っんっ・・・そーご・・」
名前を呼ばれて、抱いてる腕に、無意識に力が入る
静かな保健室に、ピチャピチャと、絡まる音が響く。角度を変え、深く・・浅く・・舌を絡め味わう
名残惜しくも離すと、はずかしいのか、下を向いている

「神楽・・好きでさぁ・・」
抱いてる腕に、力が更に入る。逃がしたくない。離れたくない・・ 
ゆっくり顔をあげ、見つめてくる潤んだ蒼い瞳は、見とれるほど綺麗だ。


「私も、そーごが好きアル」

総悟の肩に手を置き、力を入れる
「そーご」  
「なんでさぁ」  
「もっと・・・キスしたいアル」
まるで、おねだりをするように、見つめてくる瞳
上目使いで話す神楽の目に、潤んだ口に足元がぐらつきそうになる

たまらず、唇を重ねる。
神楽はベットの上に膝をついて、総悟の首に手を絡ませ、総悟の頭より上の姿勢になり、深く深く下を絡ませる。総悟は神楽の腰に手を絡まし、その舌を更に奥へと入れた

やっと離れた時には、二人とも息が上がっていた
「離れていかないアルか?」  
キツク総悟を抱きしめ問う
「頼まれても離れねぇ」
「私だけアルか?」
「生涯テメーだけいりゃあイイ」

神楽は沖田を上目で見つめる
再度確認出来た沖田の答え。やり直したいと願った思い。神様のイタズラで、又最初の場面に戻ったりはしないかと不安に顔を見上げる。自分ではない他の人と口付けした。それを無かった事にしたい。消してしまいたい。私だけの人。自分はこんなに独占欲が強かったのかと思う。絡ませても、絡ませても足りない。満足できない。
「その目ヤバイ・・」
「もっと、もっとお前に甘えてもいいアルか?いつもみたいにおちょくらないアルカ?」
「出来れば、二人だけの時にしてくだせぇ。そんな顔、他には見せたくねぇ」

ふふっと笑う神楽。やっと笑顔を見れたと思う

「もっとギュってしてヨ・」
「神楽さん?ホントに神楽さんですか?デレデレなんですが・・」
「駄目アルカ?」  又も上目で総悟を捉える
「つーか、その目凶器でさぁ。俺萌え死にしそう」
「腕組んで帰りたいネ・・教室でキスもするネ。それから・・二人で放課後デートと休日デート!」
総悟の服をギュッと掴む・・・私の物とでも言う様に
全部、私がすると頬を膨らました。

「オメー可愛すぎ・・・」
「だったら、もっと・・もっと私の事好きになるアル。」
イタズラな目で総悟の緋色の目を覗く
「そんな事言ったら、止まんなくなるから勘弁してくだせぇ。」

神楽は、総悟の手をとって、布団の中に招きいれる
シングルのベットは二人が乗ると、ギシギシと揺れる
よからぬ妄想を抱きそうな総悟は、布団から出ようとするが、神楽が
「だ〜め」と許さない
「マジでヤバイでさぁ。」
「キット・・誰も・・来ないヨ」

布団の中、自分と神楽の距離は0センチ。下から見てくる神楽は、今までの神楽か?と思う
総悟だったが、表に出さない独占欲が、神楽にもあったのだろうかと思うと嬉しくなった
シングルベットの布団の中で交わされる呪文・・・・・・


「総悟・・・・好き?」
「カナリ・・」  
「証拠を頂戴☆」
「どうやって・・?」
「こうやってアル・・☆」





<優しくしてネ>
<無理だろィ。可愛すぎて、理性なんか飛んじまわー>


FIN
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