act 38
止めて、離して、触らないで…… ……。
そう叫びたいと、神楽の体は、悲鳴をあげた。
でも、自分よりも、何倍も太い腕は、そんな華奢な腕二本を、たやすく掴んでしまった。
蹴ってやりたい。そう勢いついた足は、簡単に受け止められてしまう。
真っ暗で、何も見えなくて、でも、いくつもの、腹黒い息が、自分の体にかかる。
気持ち悪い、気持ち悪い、助けて、何度も思うのに……。
カナワナインダ……アノ時ミタイニ
神楽は、思い知らされた。
触らないで、そう必死に抵抗していた腕が、力つきたのか、あきらめたのか、
叫んでいた声が……。
「――――――――神楽ちゃん!!」
意識が飛びそうな瞬間、同じ状況にさらされている、また子の声が神楽に届いた。
神楽の右側で、いつも結ばれている髪の毛のゴムは、そこらへんに、転がって、金髪の綺麗な髪は、めちゃくちゃになってて、押し倒されてて、制服もめちゃくちゃで、真っ暗で……。
「神楽ちゃん!!」
でも、その目だけは、神楽をまっすぐに見てて……。
あきらめちゃ駄目……。
そう必死に抵抗しているまた子がいた。
華奢なまた子の体の上にまたがって、細い腕をつかんでいる掌が、また子の頬の上に、下ろされた。
暗闇の中で、大きな掌が頬を叩いた音が響いた。
「また子っ!!」
飛び出た、自分の言葉に、一瞬で、神楽の目が覚めた。
ほんの今しがたまで、もがいていた足も、柔らかい腕も、、また子の体は、ピクリとも動かなくなった。
「ぅわぁああああっ!!!」
無我夢中で、声が出たと思ったら、馬乗りになっている男を、神楽は蹴り上げていた。
細い足が、男の腹にめり込んだ。
上で、もがき苦しむ体を、必死で、神楽は蹴り飛ばすと、すぐ隣のまた子の体に乗っている男を、突き飛ばした。
でも、彼女の力ひとつで、適う筈なんてなく。
「離せっ……また子を離せぇ……っ」
再び、捕らえられてしまった。
殴ってやりたい、蹴り飛ばしてやりたい、そう思うのに……。
頬いっぱいに涙で濡らして、でも、その頬を、神楽は拭うことさえ許されなくて。
両手を、掴まれ、羽交い絞めにされて、助けることができなくて、
柔らかい、また子の体の線を、男はゆっくりとたどっていく。
ふとくて、ごつい手が、ゆっくりと、また子の服の中へ、伸ばされた。
それでも、彼女は、反応を、しめさない。ピクリとも。
暗闇の中、剥き出しにされた歯が、神楽の心を凍りつかせた。
そして、また、背後から、別の手が、神楽の服へと、伸ばされて……。
名前を呼ぶことさえも、許されないと、口を覆われて――――――――
『――――遊びは、終めぇだ、テメーら』
・・・・To Be Continued・・・・・
作品TOPに戻る