act 37

何年も放置されていたそのドアノブは、腐り、湿っていた。
引く力と、引く力、双方から引っ張られる力に、とうとう力つきてしまう。
ミシミシと鈍い音を発しながら、ぽっかりとその場所に穴が開いた。


その直後、彼女達の体が後ろへと吹っ飛ばされた。
神楽とまた子の両手に掴まれた、壊れたドアノブ。
薄暗く、ぽっかりと空いたその空間には、引っ張り合いをしていた男達の姿が見えるようで、見えない。

踏ん張りたい。でも、今の今まで耐えていた、その足は、言う事を聞いてくれなくて、もつれてしまう。
あ……っ。声を出したいけれど、それも無理だった。

ドンっ……。

不意に感じた、後頭部の鈍い痛み。
けれど、直後に感じる感触と台詞に、二人は、言葉をなくしてしまった。



「つーかまえた」



腰まわりに回された手、覆い被さるように抱きしめられている感触に、神楽とまた子は息を飲み込んだ。

この感覚、感触、背筋が凍るような……。




力を失った彼女達の体がふわりと浮いた。
「はなっ……離せぇ〜〜〜!!」



何で? どうして? だってさっき逃げたはず。
あの男から、あの人数から……。
なのに後ろからの気配は、一、二、三、四……一体何人いるのだろう。
「い、いや……ぁ……」

助けを呼ぼうとするその唇を、大きな掌がふさいだ。

神楽の真横、そこには、自分と同じように唇をふさがれている、また子の姿があった。

助けて……助けて……っ、何度だって思うのに、声を出す事が許されない。
必死になって、二人、手を伸ばした。
届け……届け……って。
人差し指、中指、どれかひとつでも、届けって、離れたくない……。
助けて……助けたい……。

「むぅ〜……っ」
「――――――――――――っ」

触れて、離れて、離さないで……離れたくない……。
助けて、助けて……助けたい……っ。




沖田
伸介様 ―――――――――――― ……。


  ・・・・To Be Continued・・・・・

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