act 34
トクン……トクン……トクン……トクン……。

神楽とまた子の心臓は、叩きつける雨音の中に、静かに混じりながら音を刻んだ。
その二つの掌は、ぎゅっと、握られている。

気づかれて、しまったのだろうか? 見つかってしまったのだろか?

なぜだか分からないけれど、見つかってはいけない。そうまた子の本能がいっていた。それは隣に居る、神楽がそうさせているともいえて。
目を離したいけれど、離す事ができない。
二人がそう思っていると、その目が、神楽達からそれた。

また子の息が、静かに漏れた。

雷がやまっていくなか、それに伴って、更に雲は空を暗くそめあげた。
だからあっと言う間に、彼らの姿が闇に消えてしまった。

カツン……カツン……カツン……カツン。
上の階へと足をあげる音が聞こえた。

また子の体は、一気に力を失ったかとおもうと、思わずその場に尻餅をついていた。
(ビ、ビビッたッス……)
自身の掌は、驚くほど、震えている。
でも、神楽の様子は……先ほどから変わらない。

(神楽ちゃん)
思いながら、また子は、繋がれていない、もう一つの掌で、そっと神楽にふれようとした。

パアァァン!!!

息を飲み込みこんだまた子と同時、彼女のカバンが吹っ飛んだ。
誇りまみれのその床に、また子のカバンは落とされた。


「い、いやぁぁぁ!!!」

唖然となったまた子の目の前で、神楽は絶叫しながら、崩れ落ちた。







キュッ……。

「沖田さん、どうしたんですか?」
走り続けてていたはずの彼の足が、いきなり止まった事に気づいたお妙は、すぐに声をかけた。
「今、あいつの声が聞こえやした」
声? お妙はそう首をかしげた。だって自分には何にも聞こえてこないのだから。
でも沖田の言う事が、偽りをあらわしているとは、この場で思えない。

さっきからだ、確かに神楽の声が聞こえてくるような気がしてならない。
胸騒ぎはどんどんと自分の中で大きくなっていく。

お妙は空を見上げた。
「どうします? このまま、行きますか?」
雨は、沖田達の頭上に、今もまだ、叩きつけられていて。
でも空は、また子達が感じたように、まっくらへと染まっている。






また子は、両手で必死に、神楽の口を塞いだ。
「神楽ちゃん! 神楽ちゃん!」
だって、そうでもしないと、上からの足音が……きっと、今ので、気づかれてしまった。
それでも、神楽はまた子の腕の中、狂ったように暴れ続けた。

また子は無我夢中で神楽のその口を塞いだ。
神楽の拒絶反応は、狂ったように増した。




キィ…………。



気づかれた !
降りて来る !


また子は神楽の口を塞いだまま、カバンをそのままに、倉庫の、隅の、隅にと足を向けた。
その複数の足音は、今度こそ、二人へと、確実に近づいてきている。
息を飲み込んだ。

ひっしと掴んでいる神楽の体は、これでもかと、震えている。それをどんなにまた子が落ちつかそうとしても、到底無理だった。
カツン、カツン……。その足音は、確実に雨音に混じって二人へと近づいた。
また子は、怖くて、たまらなくて、ぎゅっと目を閉じた。
すると、その足音が、今度は確実に、二人のもとへと近づいた。
息を飲み込む。また子があっと口をひらいた。

男は、ゆっくりと、それをひろいあげた。
角度を変えて、何度も、それを見上げる。

それは、さっき、神楽の手によって振り落とされた、また子のカバンだった。





・・・・To Be Continued・・・・・
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