弔うということ
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side:トト(シャンデラ♂)

タワーオブヘブン、それはオレの出身地。なんとなく行きたいなと独り言を呟けば
どうせ暇だから今から行くかと、求めていなかったはずの返事に驚いたのは今朝の話。
「え、ホントに行くの?」
「行きたいって言ったのお前だろ」
そう当然のように返されて閉口する、そりゃそうだけど…わざわざジアまで行く必要ないのに。
それを無為に出来ないのもオレな訳で、階段を上っていくジアの少し後ろをついて行く。
やがて屋外にでると、亡くなったポケモンを弔うための大きな鐘が見える。
ここに住んでいたときは毎日のように鳴らしていたもので、思い出深いものだ。
久し振りに鳴らしていこうとヒモを握ると横からその腕を掴まれた。
ここにはオレとジアしか居ないわけで、必然的に腕を掴んだのはジアと言うことになる。
「どうかシタ?」
「いや、今日は俺が鳴らす」
その言葉にきょとんとする、呆けているとヒモを持っていた手を離され少し鐘から遠ざけられる。
そしてジアは鐘の前に立ち、ヒモを持つと勢いよく鐘をついた。え、なんか勢い強くない?
ゴオオオオオオオオオン!!!
「ちょっ、うるさ!?」
「いや、これくらいじゃ天国まで届かないだろ」
そういってもう一度しようとするジアをオレは必死になって止めた、ジアはそれに不満気だったけど流石にダメでしょ。
けど、天国まで届かないとか言った事は意外だった。ジアは身近な人を亡くしていたとか言っていなかったから。
そんな素振り見せたこともないから、そういうことは一度もなかったんだと思っていたけどそれは違うらしい。
なんで、そんなに必死になったのかを聞いてみるとジアは珍しく言いづらそうにしていた。
「俺は今まで誰かを本当の意味で弔った事がなかった。だから、大分遅くなったけど弔おうと思っただけだ」
そう告げたジアはどこか遠くを見ていて、過去に何があったのかと思わずにいられなかった。
だけど、それを聞いても話してもらえるなんて思ってないから聞くことはしない。
鐘を鳴らして満足したのか階段の方へと歩いていくジアに、置いていかれないよう後ろから飛びつく。
少し鬱陶しそうにこちらを見るジアに笑ってみせる。
「ジアはやっさしいヨネー」
「訳が分からないな」
「ソノ歳で死の重みが分かるのはソウトウだよ」
そう告げた瞬間バッとこちらを振り返ったジアはどこか焦ったような
それでいて不安そうな表情をしていて、オレは呆気に取られる。
ジアがそんな顔をするなんて珍しい…って、もしかして変なこと言った?
「え、ナニ。どうしたの」
「……いや、なんでもない」
「ちゃんと言って、オレ何か気に障るようなコト言った?」
「違う、トトは何もしてない。俺の気のせいだったから気にするな」
何に反応したのかは分からなかったけど、ジアはほっと息を吐いてまた階段を降りていった。
結局オレは何も聞けないままジアに引っ付いていたけれど、あの時のあの表情が忘れられなかった。

弔うということ
(一瞬、死ぬ事に恐怖した。凄く寒気がしたんだ)
(シャンデラを二体連れている、死期は普通より早くなるだろう)
(その時お前らはどうなるんだ、とは聞けるはずもなかった)


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