休みきれない人
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side:ヒョウキ(バイバニラ♂)

「なんでここには眼鏡をかけてるやつがいないんだ?」
一緒にお茶をしていたライチが、唐突に聞いてきたことを一拍遅れて理解する。
確かに、1軍2軍問わずジアの手持ちには眼鏡をかけている人はいない。
それが一体なんだと言うのだろうか。相変わらずライチはよく分からない。
しかし、聞かれたからには質問に答えなければならない。
少し考えた後に、俺自身が思ったことをそのまま言うにする。
「そう言われてもな、目が悪いやつがいないからだと思う」
「なら、目が悪くなったら皆も眼鏡をかけるんだな」
それに何を思ったのか、ヒョウキは眼鏡似合いそうだとライチが笑う。
とりあえず褒め言葉として受け取っておくが、縁が無いものだと思う。
コンタクトというものもあるから、誰しも眼鏡をかけるわけじゃない…という訂正はやめておく。
変な解釈というか、勘違いをされると後々俺が困るだろうことが分かっているからだ。
気を取り直して紅茶を飲んでいると二階から一階へ降りてくる足音が聞こえた。
まだ寝ぼけているのか壁にぶつかったような音も聞こえてため息を吐いて立ち上がる。階段の方へ向かうと案の定ふらふらとおぼつかない足取りで階段を降りるコクヤが居た。
「んー…おはよ……」
「コクヤ、今午後3時だぞ」
「……うん、…知ってる…」
目をこすりながら、いつものように枕を抱えている姿に呆れつつもイスに座るように促す。
その間にライチがコーヒーを淹れていたようで、コクヤの前に置くカップを置く。
「コクヤはブラックでよかったか?」
「…うん…、合ってる…」
そう言ってコクヤはコーヒーに口をつける、さっきよりは目が覚めているようだ。
そんな穏やかな時間もつかの間、バタバタと騒がしい足音が聞こえてくる。
俺は飲みかけだった紅茶を一気に飲んでコクヤの後ろへと隠れる。
その直後、バンッと勢いよく玄関の扉を開けてウランが入ってきた。
「ヒョウキ!居るか!?」
「…俺の、後ろ…」
「嫌な予感しかしないから居ないっつっとけ」
「……うん…」
「いや、隠れる気ないだろ」
確かにウランの言う通り隠れる気はさらさらなかったが、嫌な予感しかしないのは事実で。
行きたくないと駄々を捏ねたくなるのも仕方ないと思いたい、だってこれで何回目だ。
そう思いながらも、結局はそんなことをする訳にもいかず嫌そうな顔をすることしか出来ない。
今日は気分じゃないとかそんなことは関係なく、アイツらは問題を起こすものだから俺の安らぎは足りない。
ぼんやりとしている俺をウランが早くと急かすように手を引っ張ってくる、現実逃避くらいさせてくれ。
引っ張られて玄関を出た先で見た光景に頭を抱える、頭痛がするのを気のせいだと思い込むのに数十秒。
いつの間にか目の前に普段は周りをふわふわ漂うだけの相方が居た、思わずお前いたのかと呟く。
さっきから周りうろうろしてたじゃんと呆れたようにウランが言う、ごめん相方だけど存在忘れてた。
俺の頭を冷やすように引っ付いてくる。別に熱中症になったとか訳じゃないんだが、落ち着く気がする。
ぬいぐるみみたいな姿してるくせに、と悪態を吐きながら相方を引き剥がして現実と向き合う事にする。
ナナクサ、ミズキ、トトが騒いでいるのとベラドナとトキが何故かバトルしてると言う現状を冷めた目で見る。
前者三人は騒がしい、
それぞれ何かを言い合っているようで全くこっちに気付きもしない、まあその方が楽で良いのだが。
「…どいつもこいつもふざけやがって」
自分の周りの空気の温度がどんどん下がっていくのが分かる、冷めた目で見つめる先に手を向ける。
必中とは言いがたいが、そんなことは関係ない。30%がどうした、当たるまで打つだけだ。
「俺にも少しは休ませろ!!」

休みきれない人
(そう告げた瞬間キレイに絶対零度が決まった)
(それを見て動きを止めた奴らも次々に凍らされてた)
(と、いうのは彼を呼びに行ったウランの言葉である)


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