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ぱちり

目を覚ますと目の前には青空が広がっていて、よく晴れてるなと思った
体を起こして辺りを見回すけど、先程まで一緒にいた友人は近くいない
辺りは地元の高台とは違う見慣れない場所だし、自分は思っているより不思議な体験をしているのかもしれない
まあ、一人暮らしだし誰かに心配されるなんてこともないからいいのだけど
置いてきてしまった友人……深夜は大丈夫だろうか、今頃俺のことを探し回っているかもしれない
自分が居なくなったことを気に病んでしまうのが容易に想像できて、少し憂鬱な気分になる
両親なんてものは物心つく前に他界してしまっているし、親戚とも疎遠で施設暮らしだった
だから家族が心配とか、そういう未練は全くない。ある意味寂しい人生を送ってるのかもな
けど、だからこそ親友である深夜は俺にとって大切な人だと感じていた
こんなこと本人に言うつもりはない。きっと戸惑って、そして困った顔をするだろうから
深夜には姉がいるそうだけど、面識はない。忙しい人のようで最近は長期の仕事で家にもいないようだ
だから、深夜が原因不明の体調不良に陥ってると聞いたときは気が気じゃなかった
今だって体調がよくなったとは限らない、彼は今一人だ。
「戻らないと」
自分がこうして生きている以上は、彼を一人にしたままじゃいけないような気がして立ち上がる
この場所がどこか、どうしてここにいるのかなんて分からないし、帰り道だって知らない
辺りを見回してもうっそうと生い茂る自然が広がっているだけで人の気配はない
単純に考えてここは森の中だろう
人の手が入っていないから、とりあえずここかどこか知るためにも森を抜けるしかない
進もうとすると足に何かが当たって下の方に目を向ける
「あれ、このカバン……」
落ちていたカバンを拾い上げると、それは俺が普段使っているショルダーバッグだった
カバンは持ってきていなかったはず……なら何故ここに?
さっきから分からないことばかりだ、とりあえず中を確認してみる
「教科書とかノートない。代わりに違う参考書みたいなのがあるけど、なにこれ?見たことがないな」
独り言をぶつぶつ言いながらカバンを漁るが私物は入っておらず身に覚えのない、知らないものばかりが詰め込まれていた
なにこれ怖い
ただ、二つだけ気になるものがあった。
一つは紅白色の機械的なボール、これはもう某携帯獣を捕まえるものにしか見えない



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