知らない繋がり
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side:コクヤ(ゾロアーク♂)

「それじゃ、お願いするね!」
そう言った桃色の彼女の笑顔の眩しさに目を細めつつ
分かりましたと了承の意を示した主人も笑みを浮かべる。
パタパタと桃色の少女が駆けていく音がどんどん遠くなり、そして聞こえなくなる。
静かになった夢の跡地で俺と主人の二人だけが立っていた。
他のポケモン達もいるはずなのに何故かとても静かで
そっと主人の方を見やると主人もこちらを見ていた。
「…どうするんだ、それ」
それ、というのは先程桃色の少女から渡された3つのモンスターボール。
中にはポケモンが既に居るようで、種族はヤナップ・ヒヤップ・バオップだという。
先程の桃色の少女が、なぜ主人に頼んだか俺には全く分からないが
…主人ではどうにもならないのではないか、というのが本音だ。
これは別に主人を貶している訳ではなく、役割としての問題だ。
今の主人は目立つ容姿をしている、擬人化しようとしまいとどちらにしても目立つのだ。
何かを考えるようにふむ…と主人が言った。
そんな主人にもう一度、どうするんだと問いかける。
「コクヤのイリュージョンを使えば、問題ないんじゃないかな?」
「は?」
「まだ暇でしょ?聞いてくれるのも今回まででいいから」
そう小首をかしげながら俺に尋ねる様は可愛らしいが
言葉に込められた意味を理解して思わず顔をしかめる。
暇というのはトレーナーがいないということ、今回までというのも
…つまり主人として最後のお願いということ。
確かに主人は変わってしまったし、このままやっていけるとは思わない。
主に、外見…体質的な意味でだけどそれが致命的だった。
別に、あの出来事を起こした彼を責める気はないし
俺も非があったから仕方ないのだろうと割り切った。
しかし、それとこれとは話が別な訳で。
俺は主人が好きだ、だからこそあの時だって傍に居続けた。
けれど、主人はこれ以上それを望まないのだろう。
自分のせいでと責任を感じているのかもしれない。
「…貴女の願いだからやるけど」
「けど?」
「俺は離れる気ないから」
そう目をまっすぐ見つめて言ったとき、主人は照れたような…
しかし困ったような表情を浮かべた。そして、それを誤魔化すように
俺にモンスターボールを押し付けて「よろしくね」と生前と変わらない笑顔で言った。

知らない繋がり
(桃色の彼女が何故こんなことをしたのか)
(そんなことはどうでもいいことだった)


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