影月深夜の憂鬱4
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自らをバクフーンだと名乗ったイケメンの同居人に混乱した僕は、その爆弾を落とした張本人落ち着かされた。解せぬ。
ちなみにつねった頬は普通に痛かった。残念ながらこれが現実なんだけど、正直頭が追い付かないよ。
自称バクフーンである同居人の話によると 、彼は姉の旅の仲間の一人だったらしくよく僕の話を聞いてたんだとか。
本当にジュウヤはシンヤをのことが大好きだなと、目の前の同居人は微笑ましそうに笑っていたけど…我が姉ながらブラコン発揮するのはやめてほしい。
まあその話の中で、僕に一人で寂しいと言われたこと、自分はまだやらなければいけないことがあることを仲間に相談したらしい。
「仲間内の誰かがシンヤの傍に居れば問題ないだろ」と言ったところ、言い出しっぺの法則で彼がこちらに来ることになったらしい。
それ完全に面倒事押し付けられてるよね、お疲れ様です。
けど、それを聞いてもまだ分からないことがあった。それは彼が完全に人間にしか見えないと言うことだ。
「話は分かったけど、どこからどう見ても人間にしか見えないよ」
「ああ、擬人化してるからな。元の姿にも戻れるぞ?」
そう自称バクフーンである同居人が言った後、視界が光で覆われた。その光の眩しさに思わず目を瞑る。
少ししてその光が収まってきた頃、そっと目を開ける。すると目の前にさっきの同居人の姿はなく、代わりに赤紫色の毛並みを持つバクフーンが居た。
思わず瞬きを数回、その後に頬をつねった僕は間違ってないと思う。つねった頬は普通に痛くてこれが現実だと認識させられる。
あまりに突然だったため思考が追い付かず、ぼうっとバクフーンを見つめる。そんな僕を見て何を思ったのか、バクフーンは僕の腕を掴み自分の方へと引き寄せた。
ぽすっ、という軽い音を発てて僕はバクフーンに抱き込まれる形になった。顔を上げるとバクフーンもこちらを見ていて「どうだ?」と言う風に誇らしげに鳴いた。
目の前に広がるクリーム色と赤紫色はバクフーンの毛並みでふわふわだ、炎タイプだからかポカポカと暖かいし…結構落ち着くかも。
そんなことを思いつつバクフーンを抱き締めるように腕を回す。やっぱポケモンって大きいな、と思いながら予想以上の心地好さに眠くなる。
うとうとしているとバクフーンが背中をポンポン叩いてくる、ここで寝るなってことかな。
それに対して嫌がるように顔を埋めると頭上からため息が聞こえた。
「風邪引くぞ」
「んー……、…っ!?」
聞こえてきた声に微睡んでいた意識が一気に覚醒してバッと顔を上げると、いつの間にかバクフーンは人の姿に戻っていたみたいでお互いに抱き合ってるような状態になっていた。
待って、人の状態でこの体勢は恥ずかしい。凄く顔が近いんだけど、そこはいいのかバクフーンよ。
「ご、ごめん…!すぐ離れるから!」
「?なんでそんなに慌ててるんだ」
「顔が近いんです、察してください!」
離れるって言ったのに何故かバクフーンが離してくれないから結局距離が近いままで、顔を上げれません。マジで助けてほしい。
なんとか抜け出そうともがくけど、結局僕を抱き締めている腕が離れる気配がなくて無駄に疲れただけだった。
はぁ、とため息を吐くと顎を持ち上げられてバクフーンとバッチリ目が合う。思わず後ろへ引こうとすると頭を押さえられてより強く抱き締められた。
なにこれ、なに、この状況。
そろそろ僕の頭がパンクしそうだ、心臓が音がうるさい。
「ため息を吐くと幸せが逃げるって言っただろ」
「い、言ったけど…」
この状況とは全く関係ないよね、とりあえず離してほしい。本当に恥ずかしさで顔見れなくなる。
「これから一緒に住むんだ、俺に慣れてくれよ?」
そう言ってバクフーンは笑った。今日一番のカッコイイ表情を至近距離で見せられ息が止まる。
心臓のドキドキは治まらないし顔は熱いし、非現実的だし理解は出来ても訳が分からない。
頭の中がぐるぐるして気持ち悪い、まるで目が回るようだ。何も言わなくなった僕を不思議に思ったのかバクフーンが顔を覗き込む。
「シンヤ?」
「も、無理…」
「おい、シンヤ!?」
バクフーンに完全に体重を預けて目を閉じる。非現実的なことは起きるし、同居人はイケメンでスキンシップ過多だし。
姉と違って僕は美形耐性ないんだから、加減して…。僕恥ずかしさで死んじゃう。
そんなことを思いながら、僕は意識を手放した。

影月深夜の憂鬱4
(…顔真っ赤。それに反応がジュウヤとは大違いだ)
(可愛いけど、なんかあそこまで初々しいと新鮮だな)
(とりあえずベットに運んで夕飯でも作るか)


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