礼羅と紫苑の価値観の違い
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「ん?紫苑どないしたん、そんな怖い顔して」
キョトンとした顔で礼羅は紫苑を見やる。今の彼には普段の面倒だと言わんばかりの雰囲気はなく、真剣な表情でただ礼羅のことを見ていた。そんな様子の紫苑に礼羅は何かしたかと思ったが、これと言った心当たりがなく首をかしげるばかりだ。
「なんでキミの眼は茶色なの」
しばらくの無言が続いた部屋に、静かな声が落ちた。紫苑が口を開いたのだ。突然訪ねられた礼羅は、質問の意味を上手く汲み取れずに再び首をかしげる。紫苑が言うとおり自分の眼は茶色だが、それがどうかしたのかと。紫苑と礼羅はそれなりに長い付き合いであり、もう何年経っていると言うのに今になって何を聞いているのだと。
「…そないなこと言われても分からんわ、前にも俺はコガネからの記憶しかない言うたやろ」
悩んだ末に、礼羅は思ったままのことを伝えた。紫苑はそれを予想していたのか、表情ひとつ崩さずに分かってると呟いた。
「けどおかしいんだよ、キミが茶色の眼をしていることは。進化した際、目の色は茶色から紫に変わるはず…だけど礼羅、キミの眼はイーブイだった頃と同じ。これがどういうことか分かる?」
淡々と語る紫苑に礼羅は何が言いたいんだと言わんばかりに顔をしかめた。礼羅は遠回しな言い方が苦手であり嫌いだ、真意が分からないからと言うが実際は頭が少し弱いからである。
「言いたいことあるんやったらハッキリ言うたらどうや」
そう返すと紫苑はやれやれと頭を横に振った、知らないよと呟き礼羅に向き直る。先程の真剣な表情ではなく、今は少し呆れた表情をしていた。
「礼羅は感覚麻痺してるのか知らないけど、一応その目は異常なんだよ。そりゃ風狼に比べれば全然目立たないけどさ」


紫苑と礼羅の価値観の違い


「そのことを受け入れていることも、正常から見れば嫌でも異常になる。…だから少しは気を付けてよ、こんな風にキミを…キミ達を僕は否定したい訳じゃないんだから」
そう告げた紫苑は自分ではなくどこか遠くを見ていることを、礼羅は察した。


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