X'masの延長お願いします。
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「今日は俺と出掛けてくれないか」
そう告げたのはクウカイの意志ではなく、完全に俺の独断だったりする。少し悪い気もするがたまにはこういうことも許してほしい。
カテーナは俺の唐突な提案にも嫌な素振りを見せずに付き合ってくれるようで、少し…ほんの少し嬉しくなった。
ああ、言い忘れていたがカテーナはクウカイの恋人だ。多分俺の恋人ではないと思う、この場合俺という存在の扱いがどういうものになるのか分からない。
新婚旅行としてカロスに来ている以上、今ではクウカイが結婚した相手でもあるんだが…さっきも言った通りどうすればいいのか分からず未だに距離を掴みかねている。
このことは誰にも言っていないが彼は察しているかもしれない。そんな曖昧な存在の俺だけど、別に彼を嫌っている訳じゃない。
恋愛的な意味で好きかと聞かれると返事に困るが、まあ…良い人であるのは確かだ。ただヤンデレは勘弁してもらいたい気もするがそこも含めてカテーナだからな…、クウカイもああだから仕方ないのかもしれない。
話が逸れたが俺はカテーナに対し何もしていないことに最近になって気づいた。勿論クウカイが不安定になった時などには表に出ていたが、俺の意志で向き合ったことはないのではないか。
世話になっている以上はきちんと俺からも感謝の言葉を伝えておくべきだろう。
しかし、クリスマスシーズンは何やら忙しいのだとクウカイが聞いていたようだし、流石にそんな恋人にとって大切なイベントに俺がでしゃばる訳にいかない。
だから日をずらして俺なりに何かしてやりたいと思った。そして冒頭の発言にいたる。
そう言って俺が連れ出した先はフロストケイブ、一面銀世界のこの風景は中々冬らしくていいと思う。流石に中には入らない、寒いからな。
チラリと横目でカテーナを見る、彼は感情の変化が乏しい方だと思う。最近は少し豊かになってきた…ような気がする、俺自体はあまりカテーナと話さないから実際どうなのかはクウカイ越しでしか分からない。
本当に、俺はどう思われているのやら…。考えるだけ無駄なんだろう、だからと言って聞く気にもなれない。
「…どうした?」
あまりにもカテーナを見ていたからか顔を覗きこまれていた。あまりの顔の近さに驚いた勢いでバランスを崩した俺はきっと悪くない。
雪が積もっていたおかげで尻餅をついても痛くはなかったが凄く冷たかった。俺はクウカイじゃないんだからやめてほしい、心臓に悪い奴だと内心ため息を吐く。
そんな俺を見て「大丈夫か」と手を差し出されて更に戸惑う、俺はこの手をとるべきなのかどうかすらも分からないままだ。
―――クウカイじゃない俺が、お前の手をとってもいいのか?
その言葉すら声に出せないまま、中途半端に上がって空をさまよっていた手は結局カテーナに捕まれて立ち上がらされた。
「……、ありがとな」
何に対しての感謝なのか、伝わらなくても良いんじゃないかと思うあたり俺は逃げているのだろう。本当に弱いのはクウカイではなく俺だったのだろうか。

X'masの延長お願いします。
(なあ、お前にとって俺はどんな存在だ?)
(なんて、そんなことはどうだっていいことなんだろう。きっと)


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