Merry X'mas!
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外の空気で冷えてしまった手を息で温めながら、クウカイは恋人の仕事が終わるのを店先で邪魔にはならないように待っていた。
今日は12月25日の聖なる夜…要するにクリスマスである、恋人と大切な時間を過ごす人が多い日でもあるのだろう。
現に今だって店内を見ても並ぶ人は後を断たないし、沢山のカップルや家族連れで賑わっている。大繁盛だな、なんてどこか他人事のように思えてくる。
自分だって恋人と一緒にケーキを食べたり、路上を歩く人々のように街を彩るイルミネーションを見て回ったりしたい。
しかし、愛しい人は生憎バイト(?)でその終わりを今か今かと待つばかり…こんなことならクリスマスのデートスポットでも探していた方が良かったかもしれない。
そう考えてもどうしても店先から動く気にはなれなくて、羨ましそうに街行く人を見送り続ける。
風が吹いてぶるりと身震いをした、マフラーに顔を埋めてため息をひとつ。
店内で待つことも考えはしたがやめておいた。それは迷惑をかけたくない、邪魔にはなりたくない、言うえば否定されるであろう理由からだったけれど。
確かにそう思ったから、店先で待つことに決めたのだ。ちなみに、待ってることは恋人にはヒミツにしていたりする。
言ってしまうと外じゃ風邪をひくやら、色々と心配されてしまうと思った。それに自分のせいで仕事に集中出来なくなるのは嫌だった。

ぼうっとしていると、一瞬意識が飛んだような感覚に陥りハッとする。キョロキョロと辺りを見回すが景色は全く同じ場所で彼を待っている状況は変わっていない。
気のせいかとほっと息をつくと足にコツリと何かが当たり、足元を見ると何かが置いてあった。
置いてあるものを拾い上げると買ったばかりなのか暖かいと言うよりは熱く感じる缶のココアと一枚のメモがあった。
【Merry X'mas Kukai.雪降るといいな。寒いんだから無理すんなよ、良い聖夜を】
クウカイは首をかしげた。このメモは明らかに自分に宛てたもの、だが知人の少ないクウカイにとっては相手が誰か全く分からなかった。
けれど、胸に暖かいものを感じて思わず笑みが溢れた。沈みかけていた気持ちが浮上していくのを感じて、時間が経ち客が減ってきた店を覗く。
「…早く、終わらない…かな?」


バイトの終わった彼が来る前の話。
(…天気予報だと雪の降る確率は五分五分なんだと)
(ホワイトクリスマスになるといいな、良い聖夜を)


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