裏事情、定期的な衝動にて
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「…首、締めて…楽し…っ…いか…?」
「べっつにー…苛つくからちょっとストレス発散を、ね」

そう薄く笑みを浮かべながらひたすら俺の首を絞めてくる餓鬼(見た目だけだが…)からなんとか逃げ出したい。
…が、逃げると後がめんどくさくなるのも目に見えて嫌になる。…なんやねんコイツマジでホンマにさあああああああ!!!
ああもうワイかて暇やないんやで!?はよ離せやこんの糞餓鬼ィ…!!
とは思うものの、ギリギリと力を込められて咳き込むことと酸素を取り込むことに必死だ。ふざけんな…っ。

「おっ、そこのおにーさん。ちょいと助けたげようか?」
「はあ!?馬鹿か、お前!その代わりに後で何か奢れ!!」

聞きなれぬ声が聞こえ、は?と思った瞬間。何故かさっきまで力が込められていた手が首から離れた。
急な解放感に思わず咳き込むが、ズドンと何かが落ちる音と砂が舞ち上がった。
今、何が起きたんや…?生理的に出てきた涙の向こうで、青色と紫色が見えた。

「いったー…誰、てか何してくれてんだよ…」
「裏だからいいとか、全部言い訳だと思うよ?ちっちゃいの」
「これまた馬鹿馬鹿しい奴が来たもんだ。…死ねばいい」

ポカンと一人状況が飲み込めず口を開いたままの俺に、紫と青の少…年か?性別の判断がしにくい顔つきをしているが多分少年だろう。
少年二人を呆然と見ていると、座り込んでいる俺の方に青い少年が振り返り、早くと口パクをした。ああ…もうどうにでもなれ!!俺は勢いよく立ち上がると武器の円月輪を手元に出すことに神経を集中させた。
下に向けた手のひらから光の玉が現れ、それが武器を形作る。徐々に光がおさまっていき円月輪その物が姿を見せた。
それを構え、目の前にいるクソガキ…もといアウリールに向ける。

「…なあ、いい加減にしねえとぶち殺すぞ」

加減なしで殺気を放ちそう言うと紫と青の双子はビクリと方を揺らした。やはり、コイツ等はただの一般人のようだ。
首を絞められてるのを見て、紫の方が居ても立っても居られなかったんやろな。青い方が止めてくれとったら巻き込まずにすんだんやけど…。
まあ、巻き込んでしまったもんはしょうないわ。ワイがしっかりこのクソガキに釘刺せばええんやからな。
そう言うとアウリールは顔を歪めた。

「別に殺すわけじゃないのになんなのお前ら?あーあ、本当邪魔。こういうの、ロナを思い出すから…大嫌いだ」
「お前の言うことは毎回よお分からんわ。ロナって奴のこと結局は嫌いなんか」
「違う!!そんなんじゃなくて僕は………っいや、マカロンには何言っても分かりゃしないね」

興冷めだ、帰ると言ってアウリールは暗い路地裏の更に奥へと消えていきよった。相変わらず訳の分からん奴やな。
けど、違うと言ったときのあの表情はなんや…?切なそうな悲しそうな苦しそうな、様々な感情が入り交じったあの表情は。
…アウリールが何かしら壊れとんのは分かっとる、けど仕事以外で手え出すのはいい加減止めて欲しいわ。

「おーい、おにーさん?考えごともいいけど――」
「そろそろ話聞いてくんね?そしてシャト、何か奢れ」
「クランお前何怒ってんの、遮るなよ」

振り向くと紫と青が思いっきり言い合いをしていた。苦笑いしか出てこおへんのは、もう仕方ないやんな…。

「さっきは本当にありがとうな、助かったで。…けど、アンタらみたいな子供がなんでこんなとこ居るんや?」

そう言うと紫が渇いた笑いを浮かべて、青が紫をジト目で見とる。紫の方が何かしたんが明白や、分かりやすいコンビやな。

「あー…実は迷子なもんで、路地裏にはいつの間にか入り込んでました…」
「馬鹿だろ、絶対に馬鹿だろ。今後お前の道案内はあてにしねえ」

そしてまた言い合いになりそうな雰囲気になったから、話題を変えることにした。
このままじゃ一向に話が進まへんし…それだけは勘弁して欲しいねん。そういう無駄、俺は嫌いだ。
探しているのはジュプトル、フタチマル、イワパレス、オオタチらしい。しかも全員色違いだと、珍しいこともあるものだ。
その内の誰かに会えるまで行くあてがあるのかと聞くと、それくらいは自分でなんとかすると青に断られた。
アウリールよりしっかりしている気がするのはきっと気のせいなんかじゃないだろう。

「そっか、さっきはホンマありがとな?気い付けて探しやー」
「はいはーい、おにーさんも頑張ってね?」
「…さんきゅ。ほら、早く行くぞシャト!」

そう言って青は紫の手を引き走り出しよった、…紫が転けかけとんぞ。
ま、さっきので路地裏に居続けるのは危険だってさっきので身を持って知ったんやろ。
ため息をつき空を見上げる、気付いたらもう日が傾き始めていた。仕事のことをぼんやりと考える。
ああ、そう言えば今度イバラが組んでくれるって言ってたやんな。その前にラビのとこ行かんと…首にはきっと痣が出来てるわ。
アウリールにはよく首絞められんねん、ただ弟を探す資金のために裏へ入り浸る俺が好きじゃないんだと勝手に思ってるんやけどな。
…アウリールはこの事を実際に知っているか分からへんし、どうしようもないわ。下手にこっちの情報言ったって危ないだけやしなあ。


裏事情、定期的な衝動にて
(ため息を吐いて帰路につく)
(夕焼け色のこの路地裏は不気味だ)



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