裏事情、ケンカにて
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裏社会の者が活発に動き出す深夜0時、ガヤガヤと賑わう場所があった。その場所とは建物であり、一部の裏社会に生きるものが出入りしているちょっとしたアパートみたいなものだ。
よく、ラビやイバラが仕事をしていたり居場所がない場合はこの建物に住むこともある。クラと空以外はここに住んでいるだろう。
イバラから依頼を受けたりラビに治療してもらったりすることも出来るが、たまにこの二人がいないことがあるため注意が必要である。
情報屋…否、正式にはただの情報通であるクラはテーブルをバン!と叩き不機嫌なオーラを醸し出していた。

「僕は邪魔するなって、ちゃんと言ったよね」
「………」

クラが叩いたテーブルを椅子に座り使っていたフィリアが無言で顔をあげた。
怒りに道溢れた瞳をしているクラと違い馬鹿馬鹿しいとでも言うような蔑む目でフィリアはクラを見た。
それはフィリアにとっては何でもないようなことだった。裏路地に迷い込んだ一般人に手をあげようとしたクラを。
見掛けたフィリアがかみなりパンチでクラを殴った後、一般人を表へと逃がした。本当にただそれだけの話なのだ。
しかし、クラはただそれだけのことが気に障ったらしく今の状況が出来上がった。フィリアは溜め息を吐く。
その態度を見たクラはさらに怒りのボルテージが上がり、ものすごい形相になった。まるで鬼のようである。

「殺すよ?マジで」
「クスクス、やれるものならどうぞ?」
「…殺す」

そう言ってクラはフィリアに向かい手を向けた、その手には水が集まり始めた。クラの種族は分からないが水技をよく使うように感じる。ただそれ以外に肉弾戦も得意らしく、ローキックやアクロバットを使ったりしてくる。

「死ねよ」

そう言って技が放たれようとしたその時!後方からナイフが数本飛んできて技を放とうとしたクラの手を突らぬいた。
フィリアには何処からか円月輪が飛んできていたが、こちらはかろうじて避けたようだ。しかしその円月輪に帽子を拐われ、いつの間にか近くに来ていたらしい存在により眼帯のひもを斬られた。
フィリアは片目がとても光に弱く、その片目に布かなにかを当てないと感覚が狂い視界が歪み相当な負担を背負うこととなる。
今居る場所は残念ながら照明がとても明るい玄関ホールで、フィリアには最低な明るさだった。

「此所で、人を殺めるのはやめてください。此処は元々僕のテリトリーですよ?」
「…何時からそうだったんさ」
「最初から、ですね」
「そんなことよりな、この二人の対処とちゃうんか?…イバラ、ラビ」

そう話しながらつい先程まで暴れようとしていた二人を取り押さえているイバラとマカロンの姿を横目で見ながらラビが近づいてきた。
…ナイフや円月輪を投げた彼等も暴れたことになるのではないかと言う疑問は、静かに胸にしまっておくとしよう。
ラビはまた派手にやってくれたもんさと呆れながら、クラの服と手に刺さったナイフを出来るだけ痛くないように抜いて怪我の状態を見る。
クラはイバラを睨んでいるが痛みで顔が歪んでおり、顔色もよくない。ラビが険しい顔をしながらイバラへと振り返る。

「…イバラ」
「なんでしょうか、ラビさん」
「毒塗ったナイフ、使ったさね」
「……あっ、すみません。少々イラついていまして…」

そう言ってションボリと泣きそうな顔になるイバラだが、クラのあれなら日常茶飯事だ。
もっと酷いときもあるのに何故今回は酷い怪我を負わせたのだろうか。イバラはイバラで、仕事で何かあったんだろうか。
まあ、散策は後に回すとして早いとこ手当てしないといけない。…あまり仕事を増やしてほしくない、とラビは一人思った。


裏事情、ケンカにて
(イライラして殺り合ったり)
(皆で馬鹿騒ぎしたり、食えない奴等)



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