うんめいをねじまげる
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この世界の歴史を、運命を捻曲げたと理解したのはソウリュウシティの景色を見たときだった。
だって、凄く機械的な都市になっていたから……嫌でも気づかされたんだ。
それにソウリュウシティで、"ゼクロム"に認められたNっていう若者がいたと聞いた。
"ゼクロム"に認められたのは、ジアのはずだったのに。なんで…こんなことを起こしたかったんじゃないのにっ!!
そ…そうだ、レシラムは?レシラムはどこに行ったの、私のせいで立場が逆に変わったの…?
そんなことって、でもそれ以外で説明できる情報はないし私自身、自分の影響力を甘く見ていた。
ジア…私、ここに居ちゃいけないのかなあ…。私だって、好きなことしてさ。
いっぱい泣いて、いっぱい笑って、いろんな経験をして、そうやって生きてみたかったのに。
代償が、大きいよ。いくら言っても戻らない歴史、私が変えてしまった歴史。私はこれをずっとずっと背負うことになるんだ。
…キツいなあ、私は普通の人間に生まれたかったよ。特別じゃなくて、普通に普通の人に。
ジアはこんな私をどう思うのだろう。ああ、考えただけでため息が出てしまう。

「…大丈夫、ですか」

急に声がして肩がビクリと震える、そろそろと首を回して後ろを振り返るとアカツキがいた。
アカツキは今、かいづかの代わりとして私の旅に着いてきてくれている優しい子。
アカツキって本当はジアのポケモンなんだって。でも、はぐれたとかなんとか…記憶が曖昧らしくて。

「な、なーんだ。アカツキか」
「…隣、座りますね」

へらりと笑って見せるがアカツキの表情は少しも変わず、私の隣に腰を掛けた。
大丈夫かと声をかけられた時点で私を心配していたのは分かってる。
けど、それが相談してもどうにもならないことで…下手したら敬遠、嫌悪されてしまうなら。
私には言えない、嫌われたくない。平凡になりたい、どこにでもいるような、そんな女の子になりたい。
ちらり、横目で隣に座るアカツキを見ると目があった。まさか百面相しているのを見ていたのだろうか。

「シナさんって、あれですよね」
「あれ?あれってなんのこと?」
「色んなモノに憧れてるのに、いつも最後悲しそうにするんです」

なにか辛いことでもあるんですかと続けられて言葉をなくす、まさかそんなこと指摘されるとは思ってなかったから。
私は参ったなあと笑いながら頬をかいた、なんて返せばいいか分からずとりあえず思った言葉を音にする。
アカツキって人のことをよく見てるんだねと私が言うと、そうでもないですよと返されてしまった。
謙遜することないのになと思いながら、そっかと答える。この場合しつこく言うのは間違いだから。
答え方が素っ気ないかもしれないけど、これが私の接し方。アカツキは何故か笑って私の頭を撫でた。

「アカツキ?」
「似てないのに、似てる気がするんですよね」
「え、それって…」
「不思議ですよね、本当に」

アカツキはそう言いながら、かいづかさん遅いですねと話を違う方向へと向けた。
私は少しうつむいて、ありがとうと呟いた。聞こえたかどうかは分からないくらいの小さな声だった。


うんめいをねじまげる
(かいづかに、そろそろ本当のこと言わないとなあ)
(今まで見て見ぬふりを続けてくれたんだから、これくらいは…)


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