某時刻、掃除屋二人にて
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「つまんねー…、ガキの見た目に油断しすぎだろ屑が」
「誰かさんが怒らせたせいで成長止まったって分かってるか、おい」

そう言ってついさっき喧嘩を吹っ掛けてきた男数人が転がってるのを見る。
…って相棒、今思いっきり蹴飛ばしたよね。あとが面倒だからやめて。
じーっと不機嫌そうに見ると伝わったのか、蹴飛ばすのをやめた。
うん、もう少しでかみなりパンチ使おうと思ったんだけど。
やめたなら仕方ない、ちょっと残念だけどね。
少しジト目で見てくる相棒にオレはクスクスと笑った。
少しすると、いきなり相棒が何かを思い出したかのように走り出した。
…ああ、またか。
ため息をつきながら追いかける、走らなくても浮けたりするから便利だ。
とりあえず、いい加減にしてほしいな。これはアウリールの悪い癖。

向かった先は時計塔が見える場所で、その時間を見て相棒は肩を落とした。
どうせ語り屋探しに行けないとか言うんだろうな。
早く家帰りたいんだけどね、オレとしては…。
そう思いながら深いため息をつく、隠すことはしない。
どうせ、今は自分の世界に入ってて気づきやしないから。

「…あーあ、また日付変わってるし探しに行けないじゃん」
「そりゃそうだ、絡まれたので時間とられたからね」
「イラつく…、腕一本くらい折ってこようか」
「物騒なこと言うな馬鹿、仕事しろ」

そう言って相棒の頭を叩く。あ、手加減し忘れた。
ズシャーって顔面スライディングしたとかオレ知らない。
…オレ悪くないから、そう呟いて相棒のフードを掴んで方向転換。
さっさと帰って明日に備えたいから強制的にでも連れて帰るか。
仕事、まだアウリールのサボった分が残ってるんだ。
…ったく、サボらずやれば時間なんて普通にとれるのに。
語り屋を追いかけ続けて何が面白いのやら。オレには分からない。
語り屋になったあの少年も災難だよな。色々と。
オレにはどうなろうと関係ないけど、アウリールの勝手は止めるか。
オレも少年も得しないし、特なのはアウリールくらいだ。

「…いたかったんだけどー」
「イラつきはなくなったみたいだね」

アウリールが普段の口調に戻ったのを聞いて返す。
スルーか…とか何かブツブツ聞こえるのはきっと気のせいだね。
引きずりながら家のある方へと全力で走る。
相棒が焦ったように何か言おうとしたが走る。
オレがフードを掴んで引きずりってるから言えないだろう。
ざまあみろ、たまには静かにしてほしいんだ。

「殺さないから安心しなよ、クスクス」
「て、めぇ…フィリア。あとで…覚えてろ…っ

げほげほと咳き込んでるのが聞こえた、頑張れ頑張れ。
相棒が素の口調になるのは主にイラついたときと脅すとき。
普段は見た目に合うようか知らないがわざとらしく安定しない言葉遣いをする。
年齢詐欺でもするつもりか、実年齢を知ってる側としては痛いだけだ。
見た目で騙されるやつも多くて助かることもあるが、リーチが短いのが…。
力や体力面もやはり子供だと不利だと思う、どうにできないものか。
そんなことを考えつつ家につくまで、オレはアウリールを引きずり続けた。


某時刻、掃除屋二人にて
(ごほ、げほっ。…マジで死ぬかと思った…)
(さっきから素に戻ってるよ相棒)
(あー…うん、きをつけるー)



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