某時刻、語り屋の日常にて
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ぺらぺらと本のページをめくる、もう何度も見たものだけど。
どうしても、物語を羨ましいと思ってしまうことがある。
友達、仲間、家族、どれも自分にとっては眩しく思えるんだ。
僕にも知り合いや友達はいるけどさ、少し考えてしまう。
自分から関わってて結局距離をおいているんじゃないか。
自己満足のためだけに関わって、本当はどうでもいいと思ってるんじゃないか。
こんな自分が彼らとか変わってよかったのか…?と
そんな考えが浮かんでは消えていく、自己嫌悪かな。
距離開けとるとかそんなつもりはないから、実際はどうか分からないけど。
考えるだけ無駄かと、頭を振って思考を無理矢理止めた。
なんだかスッキリしない気分だなぁ…。


本に視線を落とし、現時点での物語を見る。

"物語"

僕の中では、それは生きている。死んだら物語は生まれない。
生きているから物語を紡ぎ続け、死ぬと同時に物語は幕を閉じる。
物語は途中までが書いてある、最後まで書いてあるものはまだ少ない。
まだまだ生きると言うことだから、僕は嬉しい限りなんだけど。
あまり…早い死を見たくない。エゴイズムだって?知ってる。
沢山沢山長生きして、出来れば寿命で幕を閉じてほしい。
そんな願いも、叶うか分からないけれど…可能性を信じるしかないのだろう。


はぁ、とため息をついた僕は本を本棚に戻して。
そこら辺に、適当に出しておいたベットに思いっきりダイブした。
バフン、とふかふかのベットが音をたてる。あ、結構気持ちいい。
ちなみにダイブしたのはなんとなくだよ?
…気を紛らわしたかったとかじゃないよ。
ここは領域だからベットでもなんでも、大体のものは出せる。
無機物なら、だけどね。生き物は出せやしない、だから普段は独り。
ベットに寝転がり足をパタパタと上下させてみる。
これ、きっと埃たつんだろうなぁ…とぼんやり考えながら。
ふと視線を横にずらすと枕の傍らには本が置いてあった。
いつも持ち歩いてる僕の髪と同じ紫色の表紙をしたあの本だ。
何故枕元に置いてあるんだろう、置いてたっけ?
疑問に思い首をかしげたが、まあいっかと思い直した。
それにしても、僕って…

「言葉遊び、ばっかだなぁ…」

そう言って苦笑いする、ハッキリと言えないのだろうか?
素直に言えばいいのだろうが、どうしても遠回しな言い方が多い気がする。
語り屋のせいだろうか?癖だったら直すのは少し難しそうかな。

「むー…、どうしよっかな。友達にあんま壁作りたくないんだよなぁ」

だけど、語り屋だからやっぱり難しいかもしれない。
考えがぐるぐると同じことの繰り返し、それはまるで無限ループ。
どうしようもなくなった僕は駄目だこりゃと息を吐いた。


あ、そう言えば…最近はよく人に遭遇する気がする。
表に出ることを増やしたからかな?知り合いや友達が出来るのは嬉しいけど。
…正直、物語とはあまり会いたくないかな…。
明るいのはまだいいのだけど、この間のスカイみたいな…。
思わず変えたくなるような、そんな物語はNo,Thank youだね。
なんとなく英語使いたかっただけだよ、まあ…お断りしますってね。
変わらないのだろうね、スカイが変わると言う物語は。


そう考え事をしているとなんだか眠くなってきた。
目を擦りながら時計を見れば、もう深夜一時を回っていたようだ。

「ふわあー…、ねむ……もう寝ようかな…」

そう言ってちゃんと掛け布団を被り、目を閉じる。
視界が遮断され真っ暗になる、そんな中微睡みに少しずつ。
少しずつゆっくりと落ちていく感覚がした。

「…おやすみなさい」

僕以外誰も居ない部屋に、ぽつりと呟いた。


某時刻、語り屋の日常にて
(黒を基調とした長い本棚が並ぶ空間)
(そこに眠る化け狐がぽつり、独り)



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