某時刻、裏の者達にて
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「あの空と言う人物は何者ですか」

カルテットがクラを訪ね、言った言葉。クラをそれを聞いて薄く笑った。
クラにはカルテットの言いたいことが分かったからだ。

「ふふ、やっぱり君には分かるんだ」
「では、何者か知ってるんですね」
「知ってるけど、どう感じたのかが僕は聞きたい」

クラはニヤリと笑った。カルテットは無表情ながらため息をついた。
クラさんは相変わらずですね、と言葉を添えて。

「空と言う人物からは生と言うものを感じませんでした」
「ふーん、それで?」
「ですが、怪我はしてました。実体が無いようで有る」

そう呟いてカルテットは口を閉じた。クラは呆れたようだった。
そして、そんな答えに興味はないとでも言うように吐き捨てた。

「空は実体が有るようで無い。彼は精神だけさ」

正直、何故スカイが存在出来ているかも分からない。
こう言うのに遭遇したのはクラも初めてだったから。
不意に何かが二人の間を横切った。

「誰ですか、いきなり」
「カルテット落ち着きなよ。わざわざ僕に会いに来るのは、裏の奴だけだよ」

そう言って横切って行った物を見る、トランプのジョーカーだ。
相変わらず好きなんだね、トランプ。そう言ってクラは笑った。
すると、影から二人組が現れた。

「クスクス、よく分かってるじゃない。久しぶりだねクラ」
「ぼくはクラにきょうみないんだけどー?」

現れた二人組は、二人とも子供だった。見た目は、の話だが。
カルテットは興味なさげにこう言った。

「貴方達は誰ですか」
「ああ、自己紹介が遅れたね。オレはフィリア。そっちがアウリール」
「しゅぞくはみてのとおり。フィリア、ぼくかえって…」

アウリールと呼ばれたミズゴロウの少年は方向転換し帰ろうとしたが。
フィリアと呼ばれたヨノワールの少女がアウリールの髪を掴み。
そして思いっきり自分の方へ引っ張った。

「黙れ、たまには仕事しなよ。一応相棒なんだから」
「いたいよフィリア。あーあ…、はやくロナさがしたいなー」

そう言ってアウリールはめんどくさそうに帰るのをやめた。
クラはそんな二人を見て笑っていた、相変わらず合わない二人だと。
フィリアは髪から手を離し、黒く笑ってこう言った。

「相棒がサボった分の仕事、オレが全部してるんだけど?」
「…わかってますよー、しごとすればいいんでしょ」
「相変わらずだね、で…今回は何用?」

フィリアがクラに向き直り、資料の束を目の前に押し付けた。
クラはなるほど、と納得したように呟きそれを受け取った。
受け取ったのを見てフィリアは目を細めてこう言った。

「…へえ、その銃。クラが自分で改良したやつなんだ」
「流石だね、そうだよ。なんなら一つあげようか?」

そう言って銃を手に取り、回しながらクスクスと笑った。
カルテットはそれを見て、クラさんらしいですね。と呆れていた。
子供だろうと裏の人間ならいいのだろう、年齢性別は関係ない。
強いものが生き残り、弱いものは死ぬ。そう言うものだから。
いろんな境遇の人が複雑な事情を抱えているこの世界で、裏は誰でも踏み入れる。
踏み入れて深みにはまってしまえば、もう後戻りは出来ない。
そう、カルテットは誰かに聞いた気がした。

「せっかくだし、相棒が使いなよ」
「え゛、クラのやつつかうとか…ぼくいやなんだけど」
「相変わらず酷いね。なら、これどうぞ?」

そう言ってクラは一つのケースをアウリールに投げた。
アウリールはそれを受け取り、中身を確認した。
それと同時に雰囲気と口調が変わった。

「…これは新品なわけ?」
「当然。色は黒だけど文句ないよね、使い方の資料は入れてるから」
「ふーん…、銃弾"翠(ミドリ)"」

そう言ってクラに向かって撃った、クラは苦笑いしながら銃を構えた。

「銃弾"無(ム)"、相殺」

翠は虫タイプ、無はノーマル…と言いたいところだが違う。
無は銃弾は勿論、技を相殺し消し去るためにある。
しかし、そう何回も撃てるわけではない。クラ曰く、体力の消費が激しいらしい。

「おー、やるねクラ。結構便利そうじゃない」
「むー…、あたったほうがぼくはうれしかったなー」
「ははっ、餓鬼にやられてたまるか。用がすんだら帰ってよ、話の途中だったんだから」

そう言ってクラはカルテットに向き直った。正直、忘れられてると思っていたから意外だ。

「空は君が殺そうとしている人物の精神であり、酷く曖昧な存在だ」
「…それは、今私が思い浮かべことであってますか」
「ふふっ、そこまで言うほどの対価を君はくれてない。だから言わないよ」

ニヤニヤと憎らしい笑みを浮かべて、クラはそう告げた。カルテットは無言で去っていった。
後ろから、タイプ相性で負けてるよねと嘲笑う声が聞こえた。

あの二人組は知らないうちにいなくなっていた。
クラは一人呟いた。

「ロナ…ね、一体誰のことなのやら」


某時刻、裏の者達にて
(全く聞いたことない名前だし)
(アウリールは答えてくれないんだよね)


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