某時刻、謎の関係にて2
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「スカイってさ、自分は喜と楽が多めって言うくせに笑顔見せないよね」

散歩してたら急に声が聞こえた、辺りを見回していると「上だよ、上」と言われた。
上を見ると木の枝に座っていつも通りニヤニヤと笑ってるクラがいた。
俺と目があったのが分かるととクラは笑みを深め、手招きをした。
俺はそれに従って、クラがいる木にのぼった。

「こんばんは、スカイ」
「何の用なのさ…急に質問投げないでよ」
「ごめんごめん。で、喜と楽が多めって本当なわけ?」
「さあね、俺はそう思っただけ。根拠も証拠もないよ」
「僕はスカイの満面の笑みとか見ないし違うと思うんだけどな」

そう言ってクラは銃を取りだし、指でくるくると回す。くるくるくるくる。
俺はそれを見ていたけど視線をはずし、自分の名前の由来である空を見た。
俺はスカイだけどブラッドで、ブラッドに還るために生まれたわけで。
いくら足掻いても俺がブラッドであることに変わりはないのに、消えたくないと望むんだ。
消えたくない、でもブラッドには笑ってほしいし幸せになってほしい。
俺が還ればブラッドは今よりも笑えるんだろうなぁ。スカイを取るかブラッドを取るか。
どっちも自分…なんだけどね、ややこしいなぁ。
ぐるぐるし始めた頃、黙って銃を回し続けているクラが口を開いた。

「もし還ったら、スカイはどうなると思ってる?」
「消える」
「転生とかは考えてないんだ」
「…有り得るとでも言うの?」
「ふふっ、さあね?」

要するに何が言いたいのか、毎回自分からはハッキリと言ってこない。
曖昧にして遠回しにして、相手が気にしなければ延々と黙り続ける。
重要な部分を明かさないし言わないから勘違いされるんだ。この間だって…。
まあ、クラがそれでいいのなら俺が言うことじゃない。…そんなの分かってるよ。
バレるのはまだしも、誰かが言ったのを聞いて気づかれるのは大嫌いだって。
…理解するのは一人で十分だとクラは言った。その一人は俺はじゃないのだけれど。
クラは、今も存在してるかわからない人を思い続けている。何年経っても変わらないだろう。
…クラも根本は狂ってるしね、壊れてないだけでも十分凄いとは思うけどさ。どうにかならないかな。
狂気をたまに感じるから本当に危ない。その一人に対して狂愛と言うかヤンデレと言うか…。
でも、普通とは違う境遇同士だからクラとは知り合えたようなものだし。その人に感謝するべきなのかな。
クラに助けてもらったと言えばそうだし、…本気で文句は言えないよなぁ。

「…転生を考えたら出来るとでも言いたいわけ?」
「スカイも普通じゃないからね、僕みたいに繰り返すこともあるかもよ?」
「…ない、絶対にない」
「クスクス、僕はむしろ君に代わってほしいくらいだけどねー?って違う、この口調…」

そう言って苦い顔をするクラを見て、一人納得していた。
あまり変わらない気がしたけれどクラには重要なことらしく、ブツブツと何かを呟いていた。

空に手を伸ばしてみる、何かを掴めるわけでもないけれど。
もし転生するなら記憶も引き継ぎたい、…なんてね。
そしたらクラみたいに辛くなるんだろうけどさ。それでも、今よりは力になれるかなって。
無茶なのも偽善者なのも分かってる、転生とか言う話の時点で無茶だと思うし。
数年後、俺はまだ居るのかな。ブラッドはどんな風になってるんだろう。
クラは探し人が見つかるといいけど、カルテットはいい加減割りきってほしい。
幸せになってくれればいいな、俺の知ってる人もブラッドの知ってる人も。

「…俺がそこにいるかは分からないけどさ」
「珍しくマイナスだね、完全独立した存在になる可能性信じないの?」
「…信じてるよ、信じてる」

クラが横目でじっと見てくるけど知らない、ため息吐かれたけど知らないから。
本当は独立した存在になれる可能性は信じてない、と言うか諦めてる…かな。
薬飲まないとやっていけないなんて笑えない。でも、どうしようもない。

「…ねえ、僕が一思いに殺ってあげようか?」

そう言ってクラは笑いながら、俺の頭に拳銃を突きつけてきた。

「殺れるならね」

ニヤリと意地悪い笑みを浮かべて煽ってみた。
でもさ、クラなら本当に出来そうだよね。…俺を殺すことが。


某時刻、謎の関係にて2
(敵でも味方でもない、変わった境遇なだけ)
(周りには二人の関係はどう映るのだろうか)



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