某時刻、処分者と片割れの戦いにてザワザワと森がざわめく、その森にお面で顔を隠した少年が居た。
少年は何かを警戒しているようで、周りの様子をうかがっていた。
…この近くにはブラッドがいる小屋がある。
ブラッドは少しいい方向に向かったから、この調子でいい方へ向かってほしいから。
そのために、俺は俺に出来ることをやると決めた。
…また、怪我をしてポケセンに行くのはまずいだろうしね。
だから―――。
恐らく、薬を飲まなくても戦う分には大丈夫だろうが念のために飲んでおく。
三錠くらいでいいかな。…また心配させちゃうんだろうな、ごめん。
でも、これが俺が出来ることだから。俺も関係してることだから。
後ろに誰かの気配を感じた、…やっぱり来たか。
「…"俺とは初めましてだな、処分者"」
空の声で、空の口調で俺は喋りかけた。…二重人格じゃないからね?
今の俺はスカイじゃなくて、空と言う名の裏社会で生きる奴だ。
俺は処分者の方に振り返る、案の定処分者のユキメノコが居た。
…ブラッドを殺されるのは俺も困る、だから代わりに俺が処分者の相手をする。
これは俺が勝手に決めたこと。俺以外…いや、クラは知ってるかな。
無茶をするなと言われてはいるけれど、無茶なんかしていない。
それに…これは全部自己満足なんだ、俺って偽善者なのかもね。
「貴方は誰ですか、私の邪魔をするおつもりで?」
「…"空(クウ)、俺にとってはお前が邪魔な奴だ処分者"」
「私が処分者とよくご存知ですね。お互い邪魔と言うことは、交渉以前に決裂ですね…」
そう言って処分者は刃物を取り出した…いや、作り出したと言うべきかな。
武器は全て氷出来ているようだ、避けてさっさと攻撃しないと長期戦になってしまいそう。
…俺の武器は特にない、ナイフを常に持ち歩いてはいるけどね。
「…"交渉に乗るつもりなど最初から無い。結局は殺り合うことになるだろう?"」
「バレていましたか」
処分者はそう言って、そして不敵に笑った。
…何かするつもりか?
「貴方は私が処分すべき彼に似ている。しかし彼とは違う存在」
「…"なんのことだか"」
「とぼけても無駄です。貴方が知っていることを全て吐いていただきます…!」
処分者はそう言うと同時に地面に手をつき、地面を凍らせ始めた。
俺は木に飛び乗り地面から離れる、地面凍ったとなると完全に俺が不利だ。
木から木へと移動し、処分者の後ろから蹴りをいれようとした。
しかし、処分者は俺の足を受け止めた。流石に一筋縄じゃいかないか。
俺は処分者に向かってナイフを投げ、隙が出来たうちに距離をとる。
ちなみにナイフはコードで回収が楽なタイプだったりする。
俺が普通のナイフを改造して作ったものだから、他に使ってる奴は恐らくいないと思う。
処分者は地面に手をつくと俺が居る場所の凍った地面が割れ始めた。
その場から飛び退いたと同時に、いた場所から巨大な氷柱が地面から生えた。
少しでも反応が遅かったら完全に凍らされたか、串刺しだな…。
「…"容赦ないな処分者、俺を殺したら情報が聞けないぞ"」
「ギリギリ致命傷は避けるようにしてます、…時間が経てば死ぬくらいの怪我ですがね」
うわあ…マジで容赦ない、俺は死なないけどそれがバレるのも避けたいところだ。
タイプ相性的には勝っているけど、凍らされている分不利だ。五分五分か…?
そんなことを考えていたらナイフが飛んできて首をかすった。
血が首を伝うのを感じたが手で拭って処分者に向き直る。
ギリギリなんて生易しいものじゃない、完全に殺す気で来ている。
「余所見してたら死にますよ」
そう処分者は呟いた、ナイフ投げまくりながら言うことじゃない。
ナイフを避けながら距離を詰め、処分者が攻撃してきたのを見計らい。
フェイントをいれて蹴りを決めた、その勢いで森の木に激突した音が聞こえた。
だが、直撃を避けていたからまだまだ動けるだろう。
…それにしても、地面が凍らされているからか肌寒く感じる。
後々、この寒さで動けないとなったら冗談じゃない。なんとかしなければ…。
「…はぁ、長い夜になりそうだ」
そう、処分者に聞こえないくらい小さな声で空は呟いた。
某時刻、処分者と片割れの戦いにて
(スカイ…いや、空には精々粘ってもらわないと困るな)
(せっかく、僕がカルテットに情報提供してあげたんだしね。ふふっ)
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