某時刻、とある廃墟にて
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「ここは好きじゃありませんが…、仕方ないですね」

さかみやは、とある廃墟を尋ねて居た。
そこはただの廃墟とは言いがたく、至る所に渇いた血痕があった。
さかみやはそんなこと気にせず、ただ目的の部屋まで歩いて行った。
扉のロックを外し、大きなモニターのある部屋につくと。
イスに座ると同時にキーボードを打ちはじめた。
キーボードを打つ音や機械が作動し始めた音が聞こえるだけの部屋。
ひたすらカタカタとキーボードを打ち続け、さかみやは何かを調べ続けていた。
それが情報なのか、物なのか、人なのか。はたまた別の何かなのか…。
それを確認する術はさかみやに聞く以外にない。

「…あった…。…本当に、こんなことがありえるんですね…」

画面に写し出された何かを見て、さかみやは複雑そうな顔をした。
それは嬉しいのか、悲しいのか、怒りなのか、悔しいのか。
ごちゃごちゃで自分でもよく分からない。
ただ、一つ言えることがある。

「このような人は、私なんかよりずっと辛いんでしょうね…」

同情したい訳じゃない、何か出来る訳でもない。
ただ、そう自然と思ってしまっただけだった。

「調べられて満足かい?元研究長の"坂宮"さん」
「!?」

後ろを振り向くと見慣れない男の姿が合った。どうやって入って来た?
そもそも、この男は人間か…?
警戒していると男は手をヒラヒラと振って、怪し気に笑った。

「初めまして、僕はクラ。一応情報屋ってものをしてるよ」
「情報屋が何の用ですか。まさか、このデータベースを…」

「それはそれで面白そうだけどね、はずれ」

そう言って愉快そうにクラと名乗る男は笑った。
喰えないやつ…、何を考えているのかも分からない。
睨み続けていると彼は「そう警戒しないでよ」と笑った。

「今回は坂宮さんに頼みたいことがあって来たんだ。実体化出来る薬を作って欲しいってね」
「…何に使うつもりですか、場合によってはお断りします」
「精神体だけの訳有りな知り合いが居てね。君と違って実体がないんだよ」

息が詰まった。自分は死んだけど今もこうして存在していて、実体がある。
しかし、実体がないと物に触れないし見ているだけしか出来ない。
目の前で何が起きようとどうすることも出来ない…。
私が俯くとクラはこう言った。

「実体がないかわり、ほぼ不死身だからさ。薬には副作用つけてよ」
「…どうして、副作用をつけないといけないんですかっ!!」

私がキーボードを思いっきり叩いて立ち上がると、クラは無表情になった。
クラが無表情になった瞬間、気温が5度下がったように感じた。

「それは何故か、怪我しないし疲れないしじゃ痛みも辛さも分からない。分からなければ誰にに対しても優しくなれない。それに…何かを得るために何かを犠牲にするのは当然だろう?坂宮もそうだったじゃないか、沢山犠牲を出してさ…」
「…っ、それは……」
「ふふ、遊びすぎたかな?話を戻そう、薬を作るか作らないか…それを答えるだけでいい」

恐らく、作らないと答えても。何かしら脅して作らせるか。
情報を集め自分で作るか、他を当たるかするのだろう。
…それなら……。

「…分かりました、引き受けましょう」
「流石、話が分かる人は嫌いじゃないよ」

クラは笑った、よく笑う人だとは思ったが何者だろうか。
でも、余計な散策をすれば自分が危ない…かな。

「あと、私はもう坂宮と言う人間ではなく。さかみやと言うゴルーグですから」
「…あははははっ!!それぐらいでやったことがなくなる訳じゃないのに、結局君も逃げてるね!」
「なんとでも」

そう言うと、クラは溜め息をついてわざとらしくこう言った。

「あーあ、開き直ってるし。でも…スカイに会ったらどう思うかな?」

笑いが込み上げて来るクラは、横目でさかみやを見てこう言った。

「坂宮、アンタが与えた影響力はだいぶでかいみたいだからね」


某時刻、とある廃墟にて
(今、誰かに何か言われたような…)
(…気のせいかな。今はクラしか知り合いいないし)



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