少年が帰った時、某所にて「…どうしろと」
友人にも色々言われたりしたけど、…セーラはそれ以上だろうね。
家の前まで帰ってきたはいいけど、どうやって入れと。
自分から出て行って数日で帰って来るのは、ただの家出だよ。
…現実逃避するなって?たまにはいいでしょ。
「僕はさっさと入ればいいと思うけど?」
「…キミ、本当に意味分からないよ。苦しむ様が見たいとか言ってなかった?」
「言ったけれど。別に死んでほしいわけじゃないからね」
前も同じ返答をされた気がする、誤魔化してるのか?
俺が睨み付けると目の前の男はケラケラと笑った。
何がおかしいんだよ…。
「君なら大丈夫だから、さっさと入れ」
そう言って、男は俺を家の方へ向かせ背中を思いっきり押した。
もう一回言うけど、思いっきりだよ。扉に頭ぶつけたんだけど…。
「痛ー…なんなんだよ、アイツ」
振り向くとそこにはやはり、誰も居なかった。
俺が男の居た場所を睨み付けていると、扉が開く音がした。
「…あ、ブラッド……」
中からは呆気にとられたかの様な顔をしたセーラが出て来た。
でも、すぐに怒った様な泣きそうな顔になった。
……はぁ、やっぱり怒られるっぽい。
「今まで何処行ってたの!変な手紙置いて、ボク殴って出て行って!!馬っ鹿じゃないの!?ボクはね…!」
「セーラ落ち着け、ブラッドが中に入ってから説教しろ」
いきなりマシンガントークで説教しだすセーラをコクヤが止めた。
…え、なんでコクヤが?
「…は?コクヤなんでうちに居るのさ」
「俺はお前探す手伝いしてたんだよ、馬ー鹿」
そう言って、舌を出したコクヤを殴りたくなったのは俺だけでいい。
イラッて来たんだけど、今日のコクヤウザい。
…中に入れたのは助かったけどね。
「…ねえ、ブラッド」
「何」
「取り敢えず一発殴らせてっ!!」
そう言ってセーラが俺を思いっきり殴った。
セーラはサザンドラなんだから手加減してよ…、俺を殺す気か。
「…ってー…、今回は容赦ないね…」
「これくらい当然でしょ!馬鹿ブラッド!!」
セーラはそう叫ぶなり、俺に背を向けて小声で「おかえり」と言った。
それを聞いた俺はぽかんとした。返事をした方がいいのか分からない。
コクヤを見ると目が合った。…え、なんかヤバイ?
「ブラッド、俺も殴っていいか」
「疑問符ないし、もう殴る気満々だよね。ふざけんな」
「るっせ、黙って殴られろっ!」
「断る!」
コクヤが殴ろうとして来たから、ふいうちしてから避けてやった。ざまあ。
セーラがそれを見てクスクスと笑ってた。コクヤは格好つかないね。
「お前な…なんで俺のは避けるんだよ」
「セーラの後に受けたら、俺倒れるから」
「倒れろよ」
「黙れ」
「なにやってんの、馬鹿二人」
コクヤと言い合いしてたらセーラに突っ込まれた。
セーラは笑ってこっちを見ていた。
…何故か頬が濡れてるけど、俺は気にしないことにする。
「言い合いするのはいいけど、取り敢えず何か食べようよ。お腹空いてるでしょ?」
「ブラッドが帰って来た祝いに、ちらし寿司でも作る?」と言うセーラに。
コクヤは「祝うことかよ…」と半ば呆れ気味に笑った。
それを見て、今は笑える気さえした。
実際はどうか分からないけど、気持ちだけならいいだろう。
笑ったつもりで俺は言った。
「…ただいま」
少年帰った時、某所にて
(ちょっとコクヤ、俺の分少なめにしないでよ)
(うるせえ、だったら殴らせろ)
(…次喧嘩したら、りゅうせいぐんするよ?)
((………))
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