某時刻、雨の降る森にて3なんとなく、なんとなく来なければいけない気がした。
根拠も理由もなかった、ただ何か嫌な予感がした。
それが当たることになるとは思ってもいなかった。
「セーラ!?」
「ブラッド…ブラッドは!?」
人気のない場所にある小さな小屋、そこがブラッドとセーラの家となっていた。
ノックしても反応がなく、疑問に思ってドアに手を掛けると簡単に開いてしまった。
すると、何故か気絶しているセーラと走り書きのメモだけがあった。
「セーラ落ち着け!…これを見ろ」
そう言ってブラッドが書いたであろう、メモを見せる。
セーラは俯いていて表情が見えなかった。
「…意味分かんない、いつもは何も残さないくせに。馬っ鹿じゃないの!!」
そう言った声は震えていた、紙に滴が一つ二つと落ちて行く。
セーラは泣いていた。久々に見た気がする、いつ以来だろうか。
セーラは泣きながらグチグチと文句を言い出した。
「…馬鹿…なんで頼ってくれないの、…ごめんとか…ありがとうとか。いつも言わないくせに…」
「…アイツが馬鹿なのは前からだろ、無理矢理一人で抱え込む」
ブラッドはただ家出したわけじゃないだろう。
最近は様子がおかしかったりしたしな。
紙には単語しか書いてないが、まるで最後の言葉みたいで気に入らない。
セーラがポツリと言葉を零した。
「…外、雨降ってるの?」
「え、降ってるけど…どうかしたのか?」
「ブラッド、傘持っていってない…やっぱりおかしいよ」
外には決して小雨とは言えない雨が降っていた。
それなのに傘を持っていってないらしい。
「いつもなら持って行くのに…」と不安気に言うセーラに、俺が出来る事はこれしかなかった。
「…傘、借りるからな」
「え、ちょっとコクヤ!?」
「ブラッド探して来るから、セーラはブラッドがいつ帰って来てもいいように待機。分かったな」
「疑問符ついてないよ…、こうなると行くって言っても聞かないんだよね」
はぁ、と半ば諦め気味にセーラは溜め息をついた。
そして、まっすぐ俺の目を見て言った。
「ブラッドのこと頼んだから、引きずってでも連れて帰って来て」
「…分かったよ」
セーラが強がってるのは丸分かりだった。
黙って俺はドアを開け、外へと足を踏み出した。
…すぐ見つかるとは思ってはいないが、探さないことには始まらない。
「俺も含めて、馬鹿しかいなかったかもな」
昔を思い出してポツリと言葉が零れた。懐かしい。
けれど、残酷だった過去。…皆馬鹿だったから、ああなったのかもな。
「ははっ、本当…昔変わらないな。馬鹿野郎」
それは誰のことなのか。
コクヤ自信なのか、それとも他の誰かのことだったのか。
真意を知るのは言った本人であるコクヤだけ。
某時刻、雨の降る森にて3
(ねえ、なんでキミは人間に化けてるの?)
(…俺がポケモンだってなんで分かった)
(それが、アイツとの出会いだったなと。懐かしんでる俺がいた)
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