某時刻、雨の降る森にて
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雨が降る中、独りで歩く。いっそこのまま雨に流れて消えてしまえたら。
そんなことも考えてしまうくらいには参ってるらしい。

「………っ」

後悔は…してないと言ったら嘘になる。
でも、こうでもしないとセーラはきっと俺の様子が変なことに気づくから。
その前に出ていくと決めたんだ、友人との約束を破る気はない。
それもどうにかして叶えて見せる、嘘は…嫌いだから。

「自分から一人になる道を選んだんだね」

ふと、あいつの声が聞こえた。名前は知らない。何故か俺に絡んでくる悪趣味な奴。
人の苦しむ様を見たいとか言う奴だから悪趣味で合ってると思う。

「…何の用?」
「ふふ、別に用はないけど。本当にそれは君が望んだことだったの?」

いきなりか、何故かこいつはあらゆる情報を知っていて。
俺が何をしたかもまるでそこで見ていたかのように語りだす。

「…うるさい……」
「そんなわけないよね、君は普通じゃない自分が嫌になったんだ。現実を突き付けられて逃げだしたんだ」
「うるさい!!」

久しぶりに叫んだ気がした、言うな言うな言うな言うな!!
そう言う言葉しか浮かんでこない、苦しい、辛い。

「クスクス、君はまだ13歳の子供だ。逃げたくなるよね、いくら精神年齢が高くても君はガキだ」

当たり前だと返したかった、何故か返せなかった。
本当にそう?子供なら逃げていい?…そんなわけない。
子供だったらいいなんて、通用するわけない。

「君の選んだ道はただ周りを巻き込みたくないからでしょ。…君は優しすぎるんだ」

他の人を頼ればいいのにさ。そう言ったあいつは何故か悲しそうに見えた。
俺にはその理由がよく分からなかった、…でもそれを言う余裕なんか今はなかった。

「…まだ、まだ大丈夫」
「へえ?」
「大丈夫なうちに、誰かを巻き込む前に、独りになっただけ」

まるで自分に言い聞かせるように、言葉を紡ぎだす。
目の前の彼はいつもどおりに笑っていた。
彼なりのポーカーフェイスだろう、…気に入らない。

「間違っていても、後悔しようと、俺はそれでいい」
「そう、君はいろんなモノを諦めてるんだね」
「え…」

諦めてる?何を?
考え始めた俺を見て、彼は少し悲しそうな顔をしたような気がした。

「君は諦めているんだ、自分は違うからって。本当に、馬鹿だよ」
「…なんで悲しそうな顔してるのさ」
「僕が悲しそう?そんなわけないじゃないか、僕は君の苦しむ様を見て楽しんでるような奴だよ?」

誤魔化した、彼も一安打から悲しい顔をするのは当然。
でも何故悲しい顔をしたのか。その理由が分からなかった。
だから理由が知りたかった。

「今は見てるんじゃなくて、話してる」
「揚げ足を取るねー、精々足掻きなよ。僕は別に君に死んでほしいわけじゃないんだから」
「それってどういう…」

俺が疑問を投げる前に、彼は俺の横を通り過ぎて行った。
その通り過ぎる時に彼はこう言った。

「またね、"ブラッド"」
「!?」

振り向くとそこにはもう誰もいなかった、何故彼は俺の名前を知っている?
…俺がやったことを知っている時点でおかしいのだが、名前まで知ってるとは思わなかった。
彼は忠告にでも来たのだろうか?諦めてると言いに来たり。
結局わけが分からなかった、苦しむ様は見たくても死ぬところは見たくない?
…考えても分かるわけがない。そう思ってただでさえ働かない思考を完全に止めた。

「でも…これでよかったんだよ。…もう、…疲れたんだ……」

雨のせいか体は傾き、そのまま地面に倒れた。起きようと言う気はしなかった。
もういっそ、このまま消えてしまえたらいいと思った。
視界を閉ざすと、黒い闇に沈む感覚がした。


某時刻、雨の降る森にて
(救いが分からなくなったから、考えることを止めた少年がいた)
(その少年は、完全に生きる希望を見失っていた)



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