某時刻、ポケモンセンターにて目が覚めたらそこは倒れた場所ではなく、建物の中だった。
目がハッキリ見えて来たと同時にボクはあることに気がつき、飛び起きた。
「ブラッド、ブラッドは!?」
きっと人間達はボクが急に吠え出したとしか思えないのだろう。
…そう、人間がいることが問題なのだ。
ブラッドは人間を見ると襲いかかってしまう、しかしここには沢山人間がいる。
この状況は非常にマズい、早く人間がいないような場所へ連れていかないと…!
また人間を傷つけ、彼自身も傷ついてしまう。
何処からか何かが暴れ、物が割れたような音が聞こえた。
一気に血の気が引いた。
…ブラッドが人間を見てしまったのかもしれない。
ボクはすぐにその部屋から飛び出し、物音が聞こえた部屋へ向かった。
部屋へ入るとそこは物が散乱して酷い状態だった。
ガラスが割れ、棚に入っていた物も落ちていた。
それはまるで地震が起こった後みたいに。
そして見つけた、同い年くらいの人間の女の子の首を締めているブラッドを。
女の子は苦しがっているが、危険な状態ではないところを見ると。
首を締めてそこまで時間は経っていないらしい。
ブラッドを止めようとしたその時。
「…――――」
ブラッドがある言葉を発した、それを聞いたボクは苦い顔をすることしか出来なかった。
…ボクはそれを望まないから、きっとキミの知り合いもそれを望まないから。
ボクはただ、キミがいつか人間を見ても普通でいられる日が来ることを願うしかないんだ。
治す方法を探しても中々見つからないんだ、結局ボクはキミの力になれてない。
「ブラッド、ごめんね。…きあいだま!」
きあいだまが当たり、ブラッドは気絶した。…こうするしかなくてごめんね。
喉が楽になった女の子は咳をしながら、何が起こったのかと言うような顔で辺りを見回した。
女の子の手には二つのモンスターボールがある、それでボク達をここに連れて来たのかもしれない。
ボクはそのモンスターボールを少女から奪い、試しに一つボタンを押した。
すると、ブラッドが中に吸い込まれた。やっぱりそうなんだね。
でも、ブラッドを人の手持ちにする訳にはいかない。
女の子には悪いけどこのモンスターボールは壊させてもらおう。
もう一度ボタンを押し、ブラッドを出してから、あくのはどうでモンスターボール二つを壊した。
女の子はどうして?と言う様な顔をしているが、ボク達には事情がある。
だから、悪いけど手持ちにはなれない。
ボクは心で謝罪をしつつ、窓を割ってその建物…ポケモンセンターから飛び出した。
治療してもらえたのは助かったけれど、人間に会うのはやっぱり駄目だ。
…ブラッドが病んでしまうから。
あの時言った言葉、あれが無意識なのかどうかは分からない。
でも、そうなりたいと望む気持ちがあるからにはボクが止めないといけない。
キミはいつも酷いこと言うけど、なんだかんだで優しいんだから。
いい人なんだから、…もう"死にたい"だなんて言わないでよ。
キミが傷つけるのを望まないのは知っていたけど、そこまで自分を追い詰めないでよ。
きっとキミは、自分を追い詰めてなんかないって言うんでしょ?
強がらないで頼ってよ、馬鹿。
某時刻、ポケモンセンターにて
(彼が零したのは)
(ただ、助かりたいと言う願い)
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