「星…おまえ……そ、そうか…あの八熊と…」

「なるほど、バッシュをプレゼントね。かわいいなぁもう」


手元のお水の入ったコップを握ってふるふると小刻みに揺らす千葉さんと対照的に余裕そうに笑っている常磐さん。


あれ、常磐さんには重信先輩とのこと話してあったから、てっきりもう千葉さんも知っているものと思っていたけれど、へんなところ義理堅いというか、口が堅いなぁ。


常磐さんはにこにこ爽やかに笑っているように見えるし、コーヒーショップ内の女の子達はうっとりこちらを見ているけれどもいまは意地悪というかからかわれているのが分かっているから、出来る限り恥ずかしがらないで屹然とした態度で挑まなくては…!



「まさか会えると思わなかったので、びっくりしました。お買い物ですか?」

「ああ、うん。ちょっと新しいタイプの入ってるかなーって覗いたんだよ」

「ほぼ習性だな」



みなさん、そんなに頻繁にお店をチェックしているんだ…。
そういえば大栄バスケ部の人達も時折集まってはわいわいと楽しそうに新しいシューズとかウエアーのお話をしている時があるなぁ。


「やっぱり、バッシュは本人が実際に履いてみて決めた方がいいですかね、?」


思い切って、一番気になっていたことをおそらく重信先輩に近いところで戦っている2人にたずねてみると、うーんと少し悩みながらも真剣に考えてくれる。


「そうだなぁ、もちろん実際の物を店で見て、履いてみて決める事はおおいな」

「ですね。あぁ、でも結構ネットでサイズとデザインみて決めて、届いてからインソールで調整することもあるよ」

「インソール…!」


…天才か……!と思いながら、インソールでの調整について教えてくれる千葉さんと常磐さんの話しに一生懸命耳を傾ける。

そっか、ちょこっとサイズ感とかに違和感あるときは、普段の靴もインソールで調整したりするもんね。
スポーツ用のインソールは沢山種類も出ていて、サポートが幅広いらしい。


「とはいえやっぱり実際に試着して買うにこしたことはないけど、星はサプライズで渡したいんだ?」

「………は、い…」


すっかり夢中になってインソールのお話を聞いていたら唐突に鋭い恥ずかしい質問が飛んで来て、やっぱり油断は出来ないなこの人…!

たぶん間違いなく真っ赤になっている顔を隠すようにアイスティーをそろそろと飲み下す。


「まぁ、俺たちがあれこれ口出すよりも、きっと星に選んでもらった方がうれしいでしょ」

「常磐さん、……おもしろがってますね…!」


まさに、私も思っていたことなんだけれど、改めて口に出して指摘されるととっても恥ずかしい。
最初は鷹山君とか、それこそ常磐さんや千葉さんにアドバイスを求めようかとも思ったけれど、たぶん、きっと、思い上がりでなければ重信先輩はそういう、他のバスケ部の人達が選んだものより、私が素人なりに考えて悩んで選んだものの方が、喜んでもらえるような…気が、して…。


「困った事があれば、いつでも連絡しろよな」



恥ずかしくてもごもごしている私の頭に、大きな暖かい手を千葉さんが乗せてくれて、柔らかく肩の力が抜けた。


常磐さんもにっこりわらって相槌を打っていて、この2人にはまったく敵わないなぁ……大好きだ、もう…!


22, Sep 2020
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