「あれ、リヴァイ。めずらしいねぇ、君が私に会いに来てくれるなんて」

「別に会いに来たわけじゃない。お前の書類だ」


エルヴィンから渡された書類の束の中にハンジ宛の書類が混ざっていた。
きっと手違いで紛れてしまったのだろう。

仕方なく奴の研究室に来て書類を渡せば「まぁまぁたまにはちょっとゆっくりしてってよ」と席を勧められ茶も出されれば座るしかない。



「いやぁ今はね、この前壁外調査から持ち帰った植物の研究をしているんだよ。なぜかあの植物の周りを奴らは避けて通った。だから何か巨人の嫌がる特別な成分でも分泌してるんじゃないかってね。なまえー!ちょっとサンプル持って来てー!」



目を輝かせながら熱心にその植物の説明をするハンジは実物を見せた方がいいと判断したのか奥にいる人間に声をかけた。

クソ眼鏡にしては随分まともな研究をしていると出された茶を飲みながらその植物が出されるのを待つ。

……いや、ちょっと待て。
こいついまなまえって言ったか。

どこかで聞いた覚えのあるその名前。


記憶を辿りながらその名前を思い出そうとしていると不意に蘇った数日前の食堂での会話。
確かあのふざけた女も仲間からなまえ、と呼ばれていた。

俺が思い出した瞬間、目の前にガラス容器に入った植物を置かれる。

ガラス容器を持つ白衣を纏った腕からゆっくりと視線を移して顔を見てみれば、やはり間違いない。あの時「婚活のために調査兵団に入った」と吐かしていた女だった。



「はい。サンプルです。分析の途中なので外気には晒さないでください」

「…あぁ」

「ありがとうなまえ。なまえもちょっとお茶でも飲めば?朝から何も飲み食いしてないでしょ?休憩がてらリヴァイにこの植物について教えてあげてよ」

「わかりました」



ひとつ頷くと自分の茶を淹れに行ったのかまた奥に引っ込んだ女を見送るとハンジがこちらを振り返って説明してきた。



「彼女はなまえ・みょうじ。少し前から私の下で研究してもらっているんだ。すっごく優秀な子でね。戦闘技術もなかなか。ただ研究に没頭しすぎると他の事しなくなっちゃうのが困った所で」



こうやって私が食事のタイミングとか言ってやらないと見る見るうちに痩せて行くんだよ。だから私の研究室にはなまえに与える軽食のストックもあるんだ。
と楽しそうに語るハンジを見ながら納得する。
なるほど。普段はこの研究室に籠もりっきりだから他の場所で会う事がなかったのか。
先日食堂にいたのはハンジが飯を食って来るようにとでも言ったんだろう。


研究に夢中になるあまり自己管理を疎かにするなんて俺からしてみればただの馬鹿だ。
まったく、どこまでもふざけた女がいたもんだと呆れていると向かいの椅子が引かれてそこに女が座った。


変人は変人の下で働くんだな。まったく、うんざりだ。

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