なぜ調査兵団に入ったのか?


俺が食堂で飯を食っていると端の方で話しているやつらの会話が聞こえた。

その話題は兵士の間ではしばし繰り返される話題で回答も似たり寄ったりなのが多い、くだらないものだ。
だまって食事を終わらせて仕事に戻ればいいものを何かとお喋りの好きな奴はいるもんだ。

別に聞きたいわけでもないのに聞こえてしまうこの状況が不快でさっさと食って立ち去ろうと食べる手を早めたが、直後聞こえて来た回答にその手が一瞬止まる。


「婚活」


我が耳を疑って無意識のうちに振り返るとそこにいたのは見た目はいたって普通の女。
一緒に話していたであろう奴らも言葉を失くしてまじまじとその女の顔を見つめている。



「こっ、婚活ってなまえアンタ……え、訓練兵を志願した時から?」

「うんそうだよ。この職場は女の割合が圧倒的に少ないからね。相手選ばなきゃ結婚遅れることもないでしょ。たぶん」

「いやそれはそうかもしれないけど…そもそも女が少ないのは危険だからであって、」

「そうだね。けどほら、私逃げるのは得意だから。なんか生き残れる気がする」



けろっと言い放つ女の顔は馬鹿そのものでアホらしくなって食事を再開する。幸い奴らは俺が視線を向けた事には気づいていない。


その後も向けられる質問に答えていた女の意見をまとめると、自分は器量が良くないから普通に生活していたら結婚出来ないと思った。そして調査兵団は3つの兵団の中で最も男女比に差があるからこんな自分でも妥協して結婚してくれる男がいるだろう、と思って志願した。とのことだ。



とんだ馬鹿野郎がいたもんだ。
いつからこんな腑抜けた奴が来る場所になったんだ、ここは。

しかし話を聞いていると何度か壁外調査の経験はあるらしく、まぁここで暢気に飯を食っていると言う事は生き延びたってわけだ。
確かに本人の言っていた通り逃げるのが得意、なのかもしれない。

けどだからと言ってこれからも生き延びられるかどうかは別の話だ。
そんなふざけた理由で調査兵団にいるならさっさと辞めた方がこいつのためでも周りのためでもある。


まぁしかし、今の俺には関係無い話だし今ここでこのふざけた女に何か言って俺が聞き耳を立てていたと思われるのも不愉快だ。


放っておいたらそのうち巨人に食われるか。

興味が失せて食堂を後にする。


食堂を出る寸前、聞こえて来たのは「旦那さん絶賛募集中です」というふざけた声だった。


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