先日の会議の終わりに渡された資料を確認していると、ページが一枚飛んでいる事に気づく。
…ここはクソ眼鏡の研究報告の部分だからあの馬鹿がミスしたんだろう。

別にそこまで重要な報告が書かれているとは思えないが一応資料がきちんと揃っていないと気持ち悪い。

長い間座りっぱなしだった椅子から腰を上げて、ハンジの部屋へ向かう。
これは資料に不備があったからそれを揃えに行くだけで、決してなまえの存在を意識して奴の研究室に行くのではない。絶対に違う。


何度と無く自分に言い聞かせて、誰も寄り付かない研究室の扉を開けると机で紙に何か書いているなまえが居て、瞬間息を飲む。



「リヴァイ兵士長。こんにちは。ハンジさんですか?」

「…あぁ。奴から渡された資料に抜けてるページがあってな」

「そうですか。でもハンジさんいま外出中なんです…。もう少ししたら戻って来ると思うので、座って待っていてください」




俺を真っ直ぐに見つめて聞いて来るなまえに動揺を悟られないように用件を伝えれば予想外の返答と共に椅子を勧められる。

…あのクソ眼鏡を待たなきゃいけないのは癪だが、仕方ない。少し待ってみるか。


なまえの向かいの椅子に腰を下ろすが、なまえはずっと研究結果を纏めていてこちらを見ようともせずに一心不乱に字を連ねている。



特にする事もないからじっとその白い指先と細い髪を見ていたら、急になまえは顔を上げる。



「あの、そこの消しゴム取ってもらっていいですか」



俺の左肘の付近にある消しゴムを指して聞いて来るなまえにひとつ頷いて渡そうとするが、思い付いて俺に差し出していたなまえの左手の手首を右手で掴む。
やはり、細い。


一体急に何を、と困惑の表情を浮かべるなまえにストレートに質問をぶつける。



「なまえよ。おまえは一体なんのために調査兵団に入ったんだ?」



聞いた瞬間なまえは困惑から狼狽へと表情を変えた。
こいつは馬鹿じゃないから、俺が“婚活”の事を知っていると気づいたのだろう。


黙ってしまったなまえを逃がすまい、と更にたたみ掛けるように言葉を繋ぐ。



「結婚相手を漁るため、か?」

「……………………」

「調査兵団は野郎の数ばっか多いからな」

「…だったら何だって言うんですか」



蔑むような俺の口調に気を悪くしたのか、なまえは開き直ったようにしっかりと俺を見て言って来た。
こんな目もできるのか。おもしろい。がしかし気に食わない。



「そんなふざけた理由でここに居たらそう遠くない未来に命を落とす。調査兵団を辞めろ」

「一方的ですね。でも現に私は今日まで生きてます」

「他の奴らのモチベーションに関わるんだよ。士気も下がる。ここから出て行け」

「嫌です」

「出て行け」

「いーやーでーすー」



高圧的な俺に、本格的になまえも苛ついたのかふざけたような態度になる。
その様に腹が立ち、つい握っている右手の力が強くなる。

なまえは苦痛に若干顔を歪めるが、俺に気取られたくないのか必死に唇を噛んで耐えている。



「もう一度言う。調査兵団を辞めろ」

「っ、はっきりと、お断りします」



俺に握られているなまえの左手は血の流れが完全にストップして真っ白になっている。強情な奴だ。


“人類最強”なんて呼ばれるようになってから俺に真正面からこんな風に反抗してくる奴はいなくなった。


だから、久しぶりの敵意と敵意のぶつかり合いに俺もムキになって、気づいた時には遅かった。



ゴキン



部屋に響く鈍い音と、自分の手から伝わって来る感触。
そして何より、苦痛に見開かれたなまえの顔が、脳裏に焼き付いた。




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