…あ、高瀬先輩だ。
廊下を歩いてて、見つけた大好きな背中。
友達とじゃれ合っている笑顔が眩しい。
高瀬先輩は学校中の女の子から人気で、男の子からも人気で。
絶対無理だってわかってる。だけどドキドキするのが止められない。
彼の姿が見られれば一日幸せで、声が聞けたら笑っちゃうほど嬉しい。
高校に入ってからパソコンのやりすぎで視力がすごく落ちたけど、高瀬先輩のことだけはよく見える。
背格好とか、歩き方とか、雰囲気とか。
私の全てが彼を記憶していて、どんなに遠くにいても見つけられる。
「おっ、おわらないー!」
「っ、」
「これから昼飯?いっぱい食って大きくなれよー」
私から声をかけるなんてこと絶対できなくて、高瀬先輩の存在に気づかないフリをして通り過ぎようとすれば後ろから呼び止められて心臓のが跳ね上がる。
振り返れば大好きな大好きな高瀬先輩の笑顔があって、息が詰まる。
利央君つながりで少し話すようになってから、私の心臓はいくつあってももたない。
そんな優しい声で私を呼ばないで。そんな笑顔で私を見ないで。そんな大きな手で私の頭を撫でないで。彼の全てが私をおかしくする。
「せ、先輩もたくさん食べて、練習がんばって、ください、ね」
「サンキューな。たまには試合見に来いよ!」
じゃあ!と言って颯爽と去っていく高瀬先輩の背中をしばらくぼーっと見つめてから、友達が待っている食堂に急ぐ。
あぁやって彼が無邪気に私に関わる度に、どんどん好きの気持ちが増えるんだ。
増えて行って、大きくなって、海のように私の心に広がって、占領する。
彼の笑顔は夏の色。