カツンカツン
高く響いた自分の足音に眉が寄るのがわかった。
今日はヴァリアーでパーティーに出席している。
ちなみにボスはさぼりだ。ずるい。
一応フォーマルなパーティーだからみんなはスーツを着て、私はドレスを着ている。
ドレスに合わせてパーティーに相応しい靴を履いてきたけど、踵が高くてヒールの音が耳障りだ。
普段履いてる靴なら足音なんて絶対させないのに。しかも他のみんなの靴はもちろんヒールなんて無くていつも通り足音がしない。ずるい。
「…どうかしましたかー?」
「いや、足音が、ちょっと…」
「あー、カツンカツンうるさいですもんねー」
「…悪かったな」
「じょーだんですよ、じょーだんー」
無表情で白々しくいうフランにイラっとしながらもやっぱり足音うるさいのが気になる。
「音 消せないんですかー?普段の靴だって元から足音しないわけじゃないでしょう」
フランの言うとおり普通の靴でも最初から足音が全くしないわけじゃない。私達が“足音がしないように歩いているから”無音になる。
だからヒールでもそれができないのか、と聞いてくるフランにちょっと困りながら答える。
「うーん。できないわけじゃないんだけど。……ほら」
足元に集中して歩けばカツンカツンと響いていた音が消える。
「おー。出来るじゃないですかーさっすがー」
「でも、すっごく疲れるんだよね」
「そうなんですかー。あ、戻った」
ヒールで足音を消すのはものすごく疲れる。足の筋肉を総動員させて細心の注意を払わなきゃ無理だ。そしてずっとやっているのも無理だ。
疲れて普通に歩き出せば、また鳴り出す足音。うるさい。
「…こんなんじゃさ、なんかあったときに敵に簡単に気づかれちゃうよ」
「大丈夫ですよー」
「いや、ボンゴレ関係のパーティーだから大丈夫だとは思うんだけど、やっぱり不安でさ」
「いえ、そういうことじゃなくってー」
「?なに?」
「ミーがいるんで、今日のところは平気ですよー」
「ははっ、守ってくれるとか?」
フランの台詞に冗談めかして返して顔を見れば、予想外にフランはまじめな真面目な顔をしていてびっくりする。
え、…あれ。
戸惑っていると、またフランはさらりと言った。
「あたりまえじゃないですかー。好きな人くらい守りますー」
「!!!」
足音なんか気にならないくらい心臓の音がうるさくて。もうフランの顔が見えないよ。