西陽が教室に射し込み始めた頃、私は人生はじめての告白を受けていた。
「…っ、好きだ!俺と、つ、つきあって…くれ……」
「え、っと…無理です」
「…は?」
「…え?」
顔を真っ赤にして私に告白してきたのはあの有名な野球部エースの榛名元希くんで、びっくりしすぎた私は逆に冷静になれてはっきり言えたと、思う。
だけど榛名くんは聞こえなかったのか、ぽかんとしている榛名くんにもう一度ゆっくり繰り返した。
「ごめんなさい、無理です」
「…な、なんで、!」
「わ、私、この通り暗い奴なので声大きい人苦手で…無理です。ごめんなさい」
「!!」
私は静かな日々が好きだ。
だから榛名くんみたいに声を張り上げてしゃべるような人は苦手。しかも彼はすごくガサツだ。見ていればわかる。私はゆっくり本を読めるような人生が好き。
榛名くんが私を好きって言ってくれて嬉しくないわけじゃないけど、やっぱり私に彼は無理だ。
少し申し訳ないけど中途半端に流されて付き合っちゃうのはもっと申し訳ないと思うからはっきり言っておかなくちゃ。
しかも榛名くんは女の子にモテるんだから私以外にもたくさんいい子がいるはずだし。
「私じゃなくても、榛名くんいっぱい他にも女の子いるし、」
「っちげぇんだよ!」
「、!」
「あ、わり、その、俺生まれつき声デカくて、」
「う、うん」
「だから、声デカくなっちゃうけど、気をつける、し」
大きな声にびっくりした私を安心させるみたいに優しく眉を下げて少し声量を下げてくれる。
だけど他の男の子と比べても大きなその体を私は怖い、と感じてしまう。
「俺は、おわらないが、好きで、他の奴じゃ違ぇっていうか…」
「なん、で」
「……おまえが本とか読んでるとさ、すっげぇ幸せそうな顔してる時があってさ」
「!」
「それで、いつの間にか、おわらないしか見えなくて…って俺なんか変な奴だけど、本当に好き…だから…その……」
お顔を赤くして必死に気持ちを伝えてくれる榛名くんから目をそらせなくなる。
こんなふうに誰かからまっすぐ思いをぶつけられるのは初めてで体中の血液が熱くなるのが分かる。
「で、でも私、榛名くんのことよく知らない、し」
最初は絶対ありえないし無理って思ってたのに西日に当たって赤くなった榛名くんを見てたらなんだかもう少し考えてもいいかな、なんて思っていた。だけど臆病な私の口から出たのは言い訳じみた台詞だけ。
それでも榛名くんは嬉しそうに瞳を輝かせてくれた。
「こっ、これから知ってくれよ、!俺、ちゃんといろいろ気をつけるから!なっ!」
「……うん。…私も、もう少し榛名くんのこと、知りたい」
素直な気持ちを放課後のぬるい空気に乗せて言えばにっこり笑った彼がいた。