卒業生ひとりひとりが壇上に上がって校長先生から卒業証書をもらう。

普通の学校だったら私語を謹んで厳かに行われるんだろうけど、私達の学校は違う。みんながみんな最後に一発やらかせる絶好の機会としか思ってない。

ユウジと小春ちゃんはなぜか一緒に壇上に行って漫才をやってたし、謙也は全力疾走で駆け抜けた。白石はまたわけわかんない淫語を叫んで、千里はめずらしく着た学ランの中に子猫を隠していて、その子猫が逃げ出して会場は一時パニックになった。
とにかくすごく楽しくて、ずっと笑いっぱなし。悲しくて泣いてるのかおかしすぎて泣いてるのかわからなくなってきて、またそれが馬鹿馬鹿しくて笑う。


私もやるしかないと思った。
これが最後のチャンスだ。
私は面白いことも言えないしできないから、これしかない。



「夢はまだおわらない」

「…はい」



名前を呼ばれて壇上に上がる。会場中があたたかい雰囲気に包まれてるから緊張は、しない。

お辞儀をして卒業証書を受け取って、会場を振り返って大きく息を吸う。



「……財前、ひかるーっ!…好きだよー!浮気すんなよー!」

「うっざいわバカップル!!」


私が叫んだ直後にユウシがつっこんで会場中が笑いに包まれる。

よかった。ちゃんと噛まずに言えた。
ゆっくりと階段を降りて席に戻りながら座ってる光を見ると顔を赤くしてこっちを睨んでいた。成功だ。そんな顔して睨んだって怖くなんてないのに。可愛いだけなのに。


謙也と意味もなくハイタッチして席に座る。
私の後に呼ばれた人がさっそく一芸を披露してて、それを見ながらまた笑う。あぁ、素敵な学校だな。







「……先輩」

「あ、光」



外に出てみんなで写真を撮ったりまた会おうね、なんてお決まりの言葉を交わしていると光が寄ってきた。

その顔からはもう赤みが引いていてちょっと面白くないけどまぁ仕方ない。さっきあんなに可愛いところを見れたからいいや。


友達はなんとなく気をきかせて離れて行って二人っきりになる。



「なにしてくれてとるんスか」

「えー、だって他にやることなかったし。心の声だし」

「…先輩はもう卒業やからええけど俺はまだここで一年過ごさなあかんのですけど」

「あはは、そうだね。恥ずかしい?」

「……………………」

「……さみしい?」

「っ、……浮気なんか、するわけないじゃないッスか」

「でも光かっこいいもん。ちゃんと虫よけしとかなきゃ」

「…それはこっちの台詞や」

「え、」



光の目が鋭く私を捉えて、あ、と思った時にはもうキスされてた。

まだ沢山の生徒がいるのに。こんな風に人目のあるところでキスをされたのは初めてだ。


面白いことがあれば便乗せずにはいられないうちの生徒達はここぞとばかりにはやし立てて来て私の顔が赤くなるのが分かるけど光は余裕そうに笑ってる。悔しい。



「先輩こそ、浮気せんといてくださいね」

「しないよ。だって光怖そうだもん」



せめてもの反撃に可愛くなくそう言えば光は苦しそうに笑った。



「…先輩がもうイヤ、言うても離しませんよ」

「………それはこっちの台詞だ、バカ」



ふたりで、そっと笑った。

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