バイトが終わって、さてさてどっかで軽く食べてから帰りますかねと潤さんと相談していると潤さんのご実家から「羊肉たくさんもらったから食べにこない?なまえちゃんは忙しいかしら?」という連絡。
ちなみにこれは私にじゃなくて潤さんに来ているメッセージ。だけどお食事の機会だと名指しで私の名前が書かれていることがほとんどだと潤さんに教えてもらった。

友達連れておいで、と言われて最近連れていくのが決まって私だから自然とそうなったらしいけれど、あんまりにも頻度多く行くと迷惑なんじゃないかなとも心配になってしまう。
そんな私の気持ちは表情を見て簡単に読み取ったのか「うちの家族は喜ぶから」と優しく言ってくれる。


「私、お肉の中では羊が一番好きなんですよ」


これは私からの「行きます」のサイン。
もちろん潤さんはしっかりと意味を受け取っていて、満足げに笑う。

ちなみに付き合い始めてからはテストやバイトのシフトと重なってなんやかんやとタイミングを逃して潤さんのお家に行くのは今日が初めてだ。
潤さんってあんまりそういうこと家族に言ったりしてなさそうだけどどうなんだろう。
まぁ普通にしてればいっか。わざわざ私から言うのも変だしね。


「…ただいま」
「お邪魔します」


久しぶりに行く潤さんのご実家は相変わらず暖かくて、肩の力が抜けていくのが分かる。
潤さん曰く、「俺1人で行くよりもなまえがいた方が機嫌がいい」と聞かされるけど、本当に優しく迎え入れてくれて嬉しくなる。

ちょこっと寄って買った手土産の銘菓を渡せば「いつもいいのに!次は絶対手ぶらで来てね。自分の家だと思って!」と眉を下げて笑ってくれた。流石にね。いつも沢山ご馳走になるから、出来るだけ手土産は持参したいよね。急すぎて用意できない時もあって心苦しいけれど。


リビングに入っていけば、すでに夕ご飯の準備が整っていて美味しそうな匂いに空腹感を刺激される。
いつも通り潤さんの隣に腰を落ち着けて、いただきますを言ってから食べ始めた。


「タレ、ほら」
「ありがとうございます」


テーブルの少し向こう側にある調味料を潤さんが取って手渡してくれる。
私が潤さんのご家族に囲まれても快適に食べられるように細かく気を遣ってくれるところ、本当に優しくて気のつく人だなって感心する。

他の誰かのお家じゃなくて、潤さんのお家だから私もこんなに居心地良くて何度もお邪魔しちゃうんだろうなぁと美味しいご飯を食べながら思っていると、向かいに座っていたお姉さんがあんぐりと口を開けてこちらを見ているのに気がついた。


「ちょっと、あなた達…」
「ん?」
「付き合ってんの?!」
「!!」


「いつから?!ねぇ!いつの間に??!」と興奮状態のお姉さんと、「そうなの?」とニコニコなご両親と、うるさそうな顔で食べ続ける潤さん。


「少し前から」
「やっだもー!言ってよ!嬉しい!」
「言うと騒ぐだろ…」
「よろしくね、なまえちゃん!!」
「よ、よろしくお願いします」


席を立って笑顔でそばに寄ってきたお姉さんは私をギュッと抱きしめると満足したのかまた着席して食事を再開する。
ひとまず、弟さんの付き合う相手として嫌われていないようで良かった。

潤さんやっぱり言ってなかったんだな。まぁ積極的にいうタイプじゃないもんね。
でもだとしたら強く疑問に思うのは、


「どうして分かったんですか?」
「だって潤の感じが全然違うもの」
「そうですか…?」


これが女の勘というものならば、おそらく私には備わってない機能なんだろうな。恐るべし、お姉さん。
これまで以上に遊びにきてね、などと温かい言葉をかけてもらいながら美味しい食事を頂いた食後。

椅子に座ってのんびりする潤さんに、またしてもお姉さんが声をかけた。



「あれ?アンタ煙草やめたの?」
「いや別に」
「食後に吸わないなんて珍しい」



私も密かに疑問に思っていたことにお姉さんも気がついたらしい。
少し前から、なんとなく潤さん煙草吸ってないのかな?ってタイミングがあって、でも部屋に吸い殻とかもあるから辞めてはいないみたいなんだけど、めっきり吸ってる姿を見なくなった。
そんなことを考えていた私の顔と、面倒くさそうに返事をする潤さんの顔を交互に見合わせた後、お姉さんはおかしそうに笑った。


「そういうことね」
「???」


私にはさっぱりどういうことか分からないけれど、特に潤さんもお姉さんも補足してくれるわけでもなくデザートに取り掛かり始める。仕方なく私も出されたデザートを頂く。美味しい。


「恋は人を変えるのねぇ」


意味深に呟いたお姉さんの言葉の意味を、知る由もない。









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