外がぼんやりと明るくなって朝刊がポストに投げ込まれた音を聞いた後、やっと細切れな睡眠を取ることが出来たがやっぱり頭が冴えてしまって。
普段ならまだ余裕で寝ている時間だったが諦めて起きることにする。


…コーヒーでも淹れるか。


よく回らない頭でそこまで考えてゆっくり起き上がる。
なまえはまだ寝ている様子で、頭まで布団をかぶって眠っている。そのせいで足が布団からはみ出していて、健康的なふくらはぎが覗いていたがなるべく見ないように努めてキッチンに立つ。

程なくして機械が小さな音を立ててコーヒーを淹れ始めた頃、床から「ぅん…っ」と小さく呻き声がした。
軽く伸びをしてそのままぼんやりとした目を擦りながらなまえが目覚めた。


「ん…?え、いつの間に朝」
「…寝不足なんじゃねェの?急に寝てたぞ」
「あーうわー、ごめんなさい。寝落ちとか最悪か」
「いや俺は構わないけど……ッ!」

床にぺたんと座ったまま、両腕を頭の上で組んでググッと伸びをするなまえから目が離せなくなる。
瞳はまだ眠たそうに半分閉じられていて、いつもよりルーズな髪が陽の光を浴びて透けて見えた。昨日貸した俺のシャツから伸びる華奢な腕が気持ち良さそうに引っ張られて、それに引かれるように胸が動く姿が網膜に焼き付く。


ガタガタッ
「え、潤さんどうしました?」

堪らず棚に腰をぶつけながらしゃがみ込んだ俺を案じてキッチンになまえが寄ってくる。
覗き込むようにしゃがむなまえから必死に顔を背けて、手のひらで額を覆う。


「いや…なんでもない。少し目眩がしただけだ」
「立ちくらみですか?座った方がいいですよ」
「本当に大丈夫だから。ほら、コーヒー飲むか?」
「あー、ちょこっといただきます」


キッチンの戸棚に手をついて立ち上がる。未だ少し心配そうに俺を覗き込むなまえに心臓がうるさい。寝起きのこいつ、こんなに可愛かったか…?

いやいやまじでしっかりしろ俺。普通に友達だと思ってるやつにこんな目で見られてたら普通に気持ち悪いだろ。いい加減にしないとそろそろまずい。


ゆっくりとコーヒーを口に含んで、鼻から匂いを確かめることで僅かだが気持ちが落ち着いてくる。
まだもう少し授業まで余裕があるな。


「なんか軽く作るけど、食う?」
「んん…朝あんまりお腹空かないから、コーヒーだけで」
「了解」
「今日の一限行きます?」
「起きたし行くかな。一緒に乗ってくか?」


自分一人の食事を作るのはなんとなくモチベーションが湧かないまま適当に調理を始める。手を動かしている時間は他のことを考えずに済むから気持ちが楽だ。

なまえの車は外に停まっているが、もし授業の後バイトに行くならわざわざ2台でいく必要もないだろう、と聞くとなまえは予定を確認して面倒そうに首を伸ばす。


「潤さんバイトですよね?私今日入ってなくて」
「へー。予定でもあんの」
「はい。友人と会うんです」
「へー」

じゃあそれぞれの車だな、と思いつつ『ユウジン』と言ったなまえの言葉の響きがどこかよそよそしく聞こえた気がした。
なんとなく引っかかる気持ちを抱えた俺をよそに、なまえはパソコンを広げて今日の授業の確認をしている。
そのあまりにもいつも通りな姿に、違和感は気のせいかと頭から消すことにした。

しかし、今日はバイトなまえいないのか。つまんねーの。




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