私と潤さんの動揺と混乱を鎮めるために休憩室に座ってお茶を飲むことにした。驚いていたのは私達だけじゃなくてぽぷらちゃんも八千代さんも店長も少なからずミラクルな偶然に驚いている中、驚くどころか楽しそうににこにこしているのは相馬さんだけだ。


「で?二人は同じ大学の同じ学科なんだってね。でもみょうじさん一つ下でしょ?どうやって知り合ったの?」


興味津々な様子を隠そうともしない相馬さんを、佐藤さんは相手にしないで黙って煙草を吹かすだけだから仕方なく私が口を開く。


「えっと、いくつか取ってる授業がかぶってて、それでなんだかたまたま近くの席に座ることが多くて気づいたら話すようになって…」
「相馬さんにはわかりませんよね!だって友達いませんもん!」
「!!?」


いきなり頭上から声が聞こえて慌てて見ると天井から梯子が降りてきて女の子が顔を出した。


「やめてよ山田さん。みょうじさんが勘違いしちゃうじゃん」
「いえ、隠さなくてもいいんですよ。相馬さんが“気づいたら自然に友達になってた”というのを経験したことない事くらい山田はちゃんとわかってます」
「だからやめてって」



相馬さんが“山田さん”を苦笑であしらっているのを見ていると彼女は私にくりくりの目を向けた。


「はじめまして山田です。私は先輩なのでわからないことはなんでも聞いてください」
「はい。よろしくお願いします」
「あぁ、山田さんはまだほとんど仕事覚えてないから他の人に聞いたほうがいいと思うよ」
「!!友達のいない相馬さんは黙っててください!」
「いまそれ関係ないよね」
「葵ちゃんだって頑張ってるのに、ひどいよ相馬さん!」
「あらあら、みんなどうしたの?」
「なんでもいいが、おまえらさっさと働け」



いつの間にかスタッフの半分以上が集合してて、いい加減に店長がたしなめに来た。
みんな仲いいんだなぁ。楽しそうな職場だ。ここの一員になれると思うと嬉しい。…だけど、なーんか潤さん黙り込んじゃってるし、機嫌悪いっぽい?んだよね。潤さんはなんだかんだ基本無表情でいつも機嫌悪そうに見えるけど本当はそうじゃないのは知ってる。だけど、さっき偶然会ってから、なんかいつもと空気が違うのは感じる。

少し引っかかりながらもそのまま裏方のお仕事を見させてもらっていると店長が声をかけてきた。



「みょうじ。今日はもう帰っていいぞ。明日から出勤できるか」
「あ、はい」
「じゃあな。気を付けて帰れ」



気づいたらもうだいぶ時間がたっていて、外は暗くなりかけている。潤さんも今日のシフトは短いらしくて上がりの時間らしい。
どうしようかな。声かけようかな。でもなんて言っていいんだろう。こんな微妙な空気の潤さん初めてで、ちょっと気まずい。



「…なまえ、おまえ今日この後用事は?」
「!、べつになんもないですけど」
「じゃあ俺んとこ来ねェか?昼間言ったレポートやろうぜ」
「いいですよ」



まさかあっちから声がかかるとは思わなくて、びっくりした。しかも、なんか超普通。なんだろう。私の気のせいだったのかな。でも、いや、やっぱなんかおかしかった、と思う。まぁ後で聞いてみればいいか。本人に聞くのが一番手っ取り早いもんね。



.
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -