朝一からのシフトの日はそれでなくとも早起きがしんどいが、今日はまた特別だるかった。

昨日、なまえを見送ってから、なまえのあの部屋の中で2人がどう過ごしたんだろうとか、いまごろもしかしたら、とか。

そんな考えてもどうしようもないことが頭に浮かんでは消え、浮かんでは消え。携帯が振動する度に、なにかなまえからのメッセージなんじゃないかと期待をしたがことごとく空振りに終わった。



「さとーくんっ」
「…チっ」
「わあ、ひどいよいきなり舌打ちなんて」
「……なんか用かよ」
「いやーべつにぃ?なんか佐藤君今日は眉間のしわが5割増しだなって思ってさ」




休憩室で、そういえば今日なまえはバイト休みか、いまもまだあの男といるのか、なんて考えながら煙を吐き出していると不自然なまでに笑顔の相馬が声をかけてきた。

こいつがこのふざけた調子なのはいつものことだが、今日はそれに付き合っていられる心の余裕はない。

余計なことを言わない為にもさっさと部屋を出ようと、半分以上残っている煙草を灰皿に押し当てて席を立とうとした瞬間、いままでの気持ち悪いまでの笑顔をすっと消した相馬が冷たい声色を浴びせてきた。



「まさか、みょうじさんとその元カレくんのこと、気にしてるんじゃないよね」
「ってめ、どうして」
「どうして俺が本庄って奴を知っているかって話よりもさ、佐藤君、君がそんなことにやきもきするのはお門違いなんじゃないの?」



佐藤君は、轟さんのことが一番大切で、一番好きなんでしょ?みょうじさんも知ってることだよね



おそらく、この店の中で店長と轟だけが知らないであろう、こと。
俺としてはオープンにした気もなかったが、さすがに長い年月をかけて店中に広まっていた周知の事実。
そして、なまえも早々に気づいていたし、轟関連で気分を悪くしていた俺のことも見て知っているはずだ。




「佐藤君はさ、轟さんとくっつけばいいじゃない。もうあと少しで気持ちが届きそうだし」
「…そんなの、それこそお前に言われる筋合いはねぇよ」
「そうかなぁ?」



わざととしか思えないほど明るい声を出して言ってくる相馬に、低くうめくように言葉をぶつけると相馬は俺をまっすぐに見据えてくる。



「俺も、みょうじさんもとい、なまえちゃんに興味持っちゃったんだよね」
「!!」
「だから、佐藤君が轟さんとのことで煮え切らずにうじうじしてるんだったら、俺も参加しちゃうからね」
「っ、させねぇよ」
「もうずっと何年もうじうじしてる佐藤君に、本当にそんなことできんの〜?」



相馬はぐっさりと刺さる捨て台詞をはいて、ひらひら手を振って休憩所を出て行った。
しかもさり気なく名前で呼んでんじゃねぇよこの野郎…。
ただでさえ本庄という男のことでイライラしていたのが、相馬の件で2倍になった。



どうやら、俺に悩んでいる時間はなさそうだ。





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