今日は大学の授業の時間もバイトのシフトの時間も同じだったから、なまえも一緒に俺の車に乗せてきた。


バイト上がりに2人で軽く外で呑んでから、いつものようになまえのマンションまで送って行けば、エントランスの所に人影が見えた。


誰だ、こんな時間に。


なまえのマンションは一階にロックがかかっていて、住民じゃなきゃ鍵は開けられない。そして、こんな寒空の夜遅く、外で立っているということはここに住んでる奴じゃないんだろう。知り合いが住んでいるのならインターホンを押せば中からロックを外してもらえるはずだ。



「送ってくれてありがとうございました。また明日〜」
「ちょっと待てなまえ」
「え?」



シートベルトを外して車から降りようとするなまえを止めて、車のエンジンを切る。



「誰か、そこにいんだろ。見たことある顔か?」
「あ、ほんとだ。……ん〜、ちょっと暗くてよく見えませんね。まぁ、大丈夫ですよ」
「……俺も行く」
「え?いや、ほんと大丈夫ですって」
「いいから。それか今夜は俺の家来い」
「…心配性だなぁ潤さんは。じゃあ、エントランス入る所までお願いします」



少し納得のいかない表情をしながらも、俺の家に泊まるよりはいいと思ったのかしぶしぶ俺が付いて行く事を了承するなまえ。
こいつは心配しすぎだと言うけれど、俺からしたらなまえが無防備過ぎるだけだ。


車から降りて、なまえを俺の身体の影で微妙に隠すように歩く。こういう時俺の無駄にでかくなった身体は便利だと思う。小柄ななまえくらいならいざとなったら簡単に包み隠すことが出来る。

エントランスに着いてなまえがロックを解除しようとすると、少し離れた所からこっちを黙って見ていた男が不意に声をあげた。



「……なまえ、?」
「!!」



名前を呼ばれたなまえが振り向くよりも先に、俺が男となまえの間に完全に入ってなまえを見えなくする。咄嗟の行動だった。考える間も無く、無意識に自分の身体を盾にした。

だがなまえは俺の身体の傍からひょっこり顔を出すと、驚いたような声で男の名前を呼んだ。



「ナオト!」
「やっぱり、なまえか!久しぶり…だな」
「いや、久しぶりだけど…なんでここにいるの?」
「なまえに会いに来たんだよ。ごめん、連絡もしないで…。迷惑、だった?」
「別にそれはいいけど、びっくりしたよ」



俺を置き去りにして2人の間で交わされる会話をただ黙って聞いていると、ようやく少し落ち着いたのかなまえがその男を紹介しはじめる。
そして、なまえの唇から紡がれる言葉によって、俺は雷に撃たれたかのように動けなくなった。



「あ、潤さん。この人は本庄直人。…昔、お付き合いしていた人、です」
「!!!」
「どうも、はじめまして」
「で、こっちは佐藤潤さん。大学とバイトの先輩なんだ」



なまえはその男に俺の事を話していたけど、あまり頭に入って来なかった。
ただ一つだけ俺の記憶に染み付いたのは男の名前と、付き合っていた事と、なまえがナオト、と呼ぶ度そこに込められた微かな熱。それが何よりも昔2人が特別な関係にあった事を語っていて思わず耳を塞ぎたくなった。





.
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -