潤さんが簡単に作ってくれたおつまみを齧りながらアルコール度数の低いお酒を少しずつ飲む。こういうふうにのんびりまったりしながら課題するのが一番好き。


お互い資料集めの真っ最中だ。この課題はどれだけ上手く引用を使えるかにかかってる。
パソコンの中で資料を見比べながら一息つくと、外から風の音が聞こえる。寒そうだなぁ。そういえばいま何時だろう。あんまり遅くなる前に帰らなきゃ。


思い出して携帯で時計を確認すると、軽く日付を跨いでいて驚く。結構時間たってたんだな。キリのいいところまで終わったら帰ろう。



「どんな感じですか?私もう少ししたら帰ろうと思うんですけど」
「今日帰んのか?……ちょっと待て」



私の言葉に潤さんは立ち上がると、窓を覆っていたカーテンを少し開いた。

…うわ、雨降ってる。

聞こえてたのは風の音だけじゃなかったのか。強い風で雨が舞って、ものすごく寒そう。しかも窓にぶつかる音には何か硬いものも混ざっていて、それがただの雨水じゃない事が分かる。


「ひょう?」
「あられかもな。なまえおまえ、タイヤスタッドレスに履き替えた?」
「まだです……」



油断してたな。今週末くらいに変えに行けばいいと思ってたけど、遅かったみたい。この感じじゃ地面凍ってるかも。



「この天気で夜運転すんのも危ねェから今日は泊まってけよ」
「……わかり、ました」



確かにこの悪天候の中凍ってるかもしれない道路をノーマルのタイヤで走るのは怖い。暗くてよく見えないだろうし。事故でも起こしたら大変だ。



「じゃあ先風呂入れば?服はいつも通り適当に着ていいから」
「うーん、私もうちょっとだけキリのいいところまで進めちゃいたいからお風呂は潤さん先入ってください」
「そうか、分かった。俺の調べた所はここに纏めてあるから勝手にみてくれ」
「りょーかいです」



お風呂に立った潤さんにひらひら手を振ってから潤さんのパソコンを引き寄せて資料を見る。
集中、しなきゃ。深く意識しちゃ、だめだ。
今までだって何回も何回もここに泊まったじゃないか。気負っちゃだめだ。潤さんの存在を感じ過ぎちゃいけない。
ベットに染みついた煙草の匂いとか、借りる服の大きさとか、そういうのを意識し出したら恥ずかしくて止まらない。好きが溢れてどうにかなりそうになる。
もう、今までどうしてたっけ。どうやったら普通なんだろう。


とにかく課題に集中して気を紛らわせよう。そうすればきっと、いつも通りに出来る、はずだ。


相馬さんの言葉はものすごく正しかったのかもしれない。確かに、いままさに私達がしていることはカップルがするような事なんだと思う。
きっとこういう事をいくら仲がいいと言っても男女間で気軽にするのは良くないこと、なんだろう。控えるべきこと、なんだろう。だけど、他人にどう思われようと少しでも潤さんと一緒にいる時間が長くなって嬉しいと思うなんて。私は悪い女、なのかもしれない。




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