「よし、合格」
「? は、はい」
お店に着いて店長と会うやいなや合格を言い渡された。あれ、バイトの面接ってこんなにあっさり決まるものなんだ。拍子抜け。あんなに頑張って書いた履歴書も全然見てなかったし。でもお店も綺麗で雰囲気いいし、従業員さんも親しみやすそうな人達ばっかみたいだし、店長さんはなんか脱力系?だけど暑苦しい人よりは付き合いやすいしいいと思う。
「とりあえず今日は軽く仕事を見て回ってくれ。八千代ー」
「はぁい杏子さん」
店長に呼ばれて出てきたのはふわふわした雰囲気の可愛い感じの人。
「こんにちは。フロアチーフの轟八千代です。これからよろしくね」
「はい。バイトはじめてなのでいろいろ教えてくださ、い…?」
……??あ、あれ?ん?この人の腰にささってるの、刀…???え、なにこれ?この地域に流行ってるファッション?最先端かつ斬新・前衛的すぎて私にはわからないけど、聞いていいのかな。聞かれるの待ちなのかな。
「食器はこの棚に戻して、下げたお皿はまとめてキッチンに運ぶの」
「はい」
「レジは、そうねぇ…ぽぷらちゃんに教えてもらったほうがいいかも。私、ちょっと苦手なのよ」
困ったように笑う八千代さんは可愛い。それはもう腰にささった得物が気にならくなってくるほど。
「ぽぷらちゃん、ちょっとなまえちゃんにレジの打ち方と伝票の打ち方教えてあげてくれる?」
「うん!まかせてよ!」
さっき紹介してもらった小さくてまるで小学生のような種島さんが元気よく近寄ってくる。全くもって高校生には見えない。
「よろしくお願いします、種島さん」
「もっと普通でいいよ〜!私の方が年下だし!」
なまえちゃんは律儀だねぇ〜と笑う種島さんを見て、この童顔から律儀なんて言葉が出てくるのにものすごい違和感を感じるけど、お言葉に甘えてもう少し砕けさせてもらおう。
「ぽぷら、ちゃん?よろしく」
「うん!まずレジはね、伝票を受け取って、ここを押して〜」
「あれ?君が今日から入ったバイトの人?」
「あ、はい。みょうじなまえです」
「うん知ってる。俺は相馬博臣。キッチンなんだ」
にこやかに笑う相馬さんに一瞬流されそうになるけど、なんかいまおかしかった。“知ってる”?ん?八千代さんか店長に私のこと聞いたんだろうか。それにしても情報が速い。
「君、佐藤君の大学の子でしょ?友達なんだってね」
「え、」
さとうくん?大学には何人か佐藤って苗字の人はいるけど、私が友達と呼べるのはひとりしかいない。そしてこの人は何者…?
「さ、佐藤って、「なまえ?」
「!!」
聞き返そうとすると後ろから名前を呼ばれて、咄嗟に振り向く。
そこに立っていたのは白い、相馬さんと同じ制服を着た潤さんで、頭の中の混乱はピークに達する。
「じゅ、潤さん?!!」
「おまえ、バイトの面接ってまさか…」
「そのまさかだよ佐藤君!」
潤さんがバイトしてるのは知ってたけど、まさかここだったなんて。たしかに潤さんの働いてる場所聞いたこと無いし私もバイトの面接先言わなかったけど、こんな偶然って…。
ひとりすごく生き生きした笑顔を浮かべる相馬さんは相変わらず謎だけどこの際気にしまい。
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