店長に来月のシフト希望出しとけ、と言われたので休憩室で手帳と潤さんと相談しながらシフト表を埋める。

一応、週3日で各5時間以上が最低ラインだけど、店長は理解のあるっていうかあんまり細かいことを気にしない人で結構ゆるゆるだ。



「木曜日は授業午後からだから午前中入ろうかな…潤さんどうします?」
「俺、その日はなんもねぇから一日入る」
「あんまりずっと立ち仕事してると痔になりますよ」
「そうだよ佐藤くん。痔には気をつけてね」



いつの間に休憩室に入ってきたのか相馬さんがにやにや笑いながら潤さんのシフト表を覗きこんでいる。
潤さんが無言で器用に座りながら相馬さんを蹴ると、痛いなぁ、と蹴られたとこをさすりながら、また笑顔でぽろっととんでもない事を言った。



「いっその事轟さんにいつ入るのか聞いてそれに全部かぶしちゃえばいいじゃない」
「!!」
「………………」


急いで潤さんの顔を盗み見るとげっそりした顔でただ黙ってる。
あれ、潤さんの八千代さんへの想いって、結構オープンな話題なんだ。そうかそうか。なら気をつかうことなかったな。


「潤さんやっぱり八千代さんの事狙ってたんですね。あっちにも気が無い事はないと思いますよ、言っちゃえばいいのに」
「いやほら、佐藤くんへたれだから」
「うるせぇ」


少し不機嫌になったのかぷい、と横を向いて煙草を吸いはじめた潤さんは結構大人だから本気で怒ってないのはわかる。

でも潤さんと八千代さん、お似合いだと思うんだけどなー。
八千代さんそこそこ背丈あるから背の高い潤さんと並んでもアンバランスじゃないし、2人とも気性が穏やかだから上手くやっていけそう。


「ほら、なまえ、書き終わったなら帰るぞ」
「あ、はーい」


今日は潤さんが家まで迎えに来てくれたから帰りも送ってもらう。

私達のやりとりを見て相馬さんが轟さんにもそういう風にできればいいのにねぇ、とか言ってるけど潤さんは完全無視だ。たぶんだけど、からかわれるのなれてるんだと思う。



「………おまえは平気だと思ってるけど、…余計なこと言うなよ」
「余計な事って?」
「その、……轟のこと、とか」


車に乗って発進してしばらくすると少し言いにくいそうに言ってきた潤さんの言葉の意味を理解して、若干腹が立つ。なんだ、私が面白がって人の、しかも潤さんの色恋沙汰を言いふらすと思ってるのか。


「言うわけないじゃないですか」
「そうだよな…悪い」


私の口調が少し固くなったのに気づいたのか、潤さんはすぐに謝ってくれるから、私もすぐに腹立たしいのは収まる。潤さんのこういうとこも長所だ。


しばらくとりとめの無い話をしていると潤さんの携帯が鳴ってディスプレイを見た潤さんは微妙に嫌な顔をして携帯を耳にあてる。


「…なに」


だるそうに電話を取った潤さんはずっと黙って相手の話を聞いている。
微かに漏れてくる音で電話の相手が女の人ってことはわかるけど、八千代さんでもなさそうだ。
誰でもいいけどおまわりさんに見つからないように気をつけろよーと運転しながら電話をする潤さんを見ていると、不意にちらりとこっちを見た潤さんと目が合う。だけどそれもすぐにそらされて、それから潤さんはわかったから、みたいな返事をして電話を切った。


「……あのさ」
「なんですか?」



すこし躊躇いながら話す潤さんがめずらしくて私も静かに聞きかえすと、ふ、と息をついてから言われた。


「なんか親が大量に蟹もらったみたいで、友達誘って食いに来いって」
「あ、じゃあ私こっから歩きますよ。もう結構近いし」
「いやちょっと待てって」
「?」



これからお友達を誘ってごはんなら私は邪魔だな、と思ってシートベルトを外して車を降りようとすると咄嗟に止められる。


「…だから、おまえ、これから時間ある?」
「ありますけど」
「蟹、嫌い?」


ここまで聞いてようやく潤さんの 言わんとしてる事がわかる。あぁ、もう潤さんのこと鈍感とか言えないな。


「大好きです!」


私の答えを聞いた潤さんは安心したように笑うと目的地を変更して、アクセルを踏んだ。



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