伊波さんの後をついて私にできるサポートをしながら仕事を覚える。



「ご注文を繰り返します。コーンスープがおひとつ、チーズオムライスがおふたつ、グリーンサラダがおふたつ。コーヒーは食後でよろしいですか?」



最初の印象が強烈すぎて少し怖かったけど接客中はいたって普通、というか完璧だった。これは勉強になる。私よりも年下なのにしっかりしててすごいなぁ、とか感心しながら教えてもらったパフェを作っているとひどく怯えた顔の伊波さんがやってきた。



「あの、みょうじさん…これ、8卓さんに持って行ってくれませんか…?」
「? いいですけど」



今日は接客はしないで伊波さんの裏でのサポートかと思ったけど、接客していいんだ。まぁそこまで気負いするような難しい事じゃないだろうから別に全然構わないけど。
承諾すると伊波さんは申し訳なさそうにお礼を言って少し遠巻きに私を見ている。




言われたテーブルに行けばなんとなく伊波さんが駄目だった理由がわかった。確かにこのテーブルは無理だろうなぁ。…みごとに男ばっかりだ。



「お待たせいたしました」
「あれ?新しいバイトの子?」
「ほんとだ見たことねぇ」
「いつからなの?名前は?」


料理を置くと、常連さんなのかなんだかなれなれしく話しかけられる。


「はい。今日から働かせていただいてますみょうじです」


0円スマイルを提供して言うと男の人達ははしゃぎだす。


「かわいーねみょうじさん。今度から指名しちゃおっかな〜」
「当店はファミリーレストランなのでそのような怪しいシステムはございません」



にっこり笑って冗談に返事をすると、なにが嬉しかったのかゲラゲラ笑いながら食事を始めたから軽くお辞儀をして奥に戻るとまだ不安げな顔な伊波さんが寄ってくる。




「みょうじさんすごいですね…あんな男の人に…。接客なれてるんですか?」
「さすがにこの歳になればあのくらいの人の相手は一通りなれますよ」
「へぇ〜大学生ってすごい…」


すごい羨望の眼差しみたいなのが伊波さんから送られてきてるけど、なんだかなぁ。大学生になってもやることと言ったらアホみたいなことばっかだし二日酔いで頭ふらふらしてる奴の割合のが多いだろうし。


伊波さんは男の人にとっては脅威でしかないんだろうけど、それを除けば結構普通の女子高生だ。私にもこんな可愛らしい時代があったんだろうか。つい最近の事のはずなのに、上手に思い出せないや。



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