休み時間中に北沢と文化祭のステージ企画書を確認していると廊下に小さな影が見えた。
二年の階であきらかに戸惑って浮いているその影が星だ、と気付いたのはそのすぐ後。
最近、昼に会えなくて練習でも寮でもゆっくり話す時間が無くて星に触れた記憶が、無い。
どうしようもなく星に触れたくなって席を立とうとした瞬間、横山が星の頭を撫ぜた。
そして星は顔に笑みを浮かべて横山と喋る。
…くそ、なんで俺はこんなんに時間取られてんだ…!
委員会は実際出てみると毎回他愛無く代りばえしない内容で、何度かさぼって星と飯を食おうと思ったけどその度北沢が目ざとく見つけてくる。
悪いのは北沢じゃない。委員会でも、きっとない。
でもやっと手に入れた好きな女と一緒にいたいと思うのは当然の事だろ?
そうじゃなくても俺は他の奴らと比べて自由になる時間が少ない。
もちろんそれを嫌だと思ったことは無ぇし、バスケは自分が望んでしてることだ。
だけど学校では委員会に、寮では呼人に邪魔されて、いい加減我慢に限界がきて、昨日例によって例のごとくふけようとした俺を追いかけて来た北沢に言った。
「どうせいつも内容なんて変わんねぇし、俺がいてもいなくても同じだろ?」
実際あってないようなミーティングの内容をノートにとっているのは北沢で、俺はただ座っているだけ。
一度俺が書こうか、と切り出したこともあったがなんだかそれが楽しいみたいで断られた。
だから俺がいなくてもなにも困ることはない。
そりゃ北沢1人に押し付けるのは悪いと思う。だから日を変えて俺だけが出る日も作ればいい。
その旨を伝えると、北沢は途端に顔を歪めて目に涙を浮かべた。
しまった、と思ってももう遅い。
なにがなんだか分からないうちに出来上がった泣かせた男と泣かされた女の図。
心底めんどくせぇと思いつつも周りの目もあって焦って謝ると「重信は私といるのが嫌なんだね。ごめんね。委員会もこれからは私がずっとひとりで出るからいいよ」とトドメの一言。
こうなるともう周りの奴らからしてみれば俺が悪者以外の何物でもなくなった。
そんなことひと言もいってねぇだろ、なんて泣いてる女相手に言えるはずもなくただ馬鹿みたいに謝って委員会に向かった。
あの周りからの白い目は一日たった今でも鮮明に思い出せるほど居心地の悪いものだった。
だから俺がこの委員会から逃れる術は、ないって事だ。
どうせ星はまた不破と上木と飯を食っているんだろう。
それは俺のポジションのはずなのに。
手を伸ばせばすぐに手に入れられそうなのに、それはまるで白昼夢を掴むように、むなしく空ぶる。
そんな感じ、だよな。俺と星って。
星は、いまの現状をどう思っているんだろう。
あいつは俺といなくても平気なのか、なんて女々しいことまで思考を過る。
こんな生活も文化祭が終わるまでだ、と割り切ろうとしても文化祭までの日数を数える度 憂鬱になるのは止められない。
14, Nov 2011
24, Sep 2020