普段は騒がしい屋敷も夜が深まっていくにつれて少しずつ静かになってくる。
明日提出する報告書も6割くらい終わったし、コーヒーでも飲んで休憩するか、と腰を上げた時机の上に置いてあった携帯が揺れた。
こんな時間に誰だろう、とディスプレイ画面を見るとまさに絶賛片思い中のまた夢からの着信で心臓の刻むリズムが否応なく速くなる。
「…どうしたぁ」
「もしもしスクアーロ?ごめんね夜遅くに。もう寝てた?」
「いや、まだだ」
「それはよかった。あのさ、急で悪いんだけど、今日スクアーロの部屋に泊めてくれない?」
「はあぁ??!!」
また夢からのありえないお願いに思わず叫び気味になるのを止められない。
「なんかベルがさ隣で一人パーティーはじめちゃってうるさくて寝られないんだよね。あの調子じゃ今晩は終わりそうもないし」
疲れたような、あきらめたようなまた夢の口調に、ベルがどんな調子なのか容易に想像がつく。
そうか、そういえばまた夢の隣の部屋はベルの野郎だったな。
あいつはたまーに狂ったように夜騒ぎ出して、何度注意しに行っても返ってくるのは反省の言葉じゃなくナイフばかりだからもう俺たちは自然現象として受け入れる耐性ができていた。
だけどその度にまた夢は空いてる部屋に行って一晩明かしていたのに、今日はどうして急に俺の部屋なんだろう。
それをしどろもどろになりながら聞くと困ったような声が電話口から返ってくる。
「いつもは始まるのもうちょっと早い時間なんだよね。流石にこんな時間にメイドさん起こして部屋用意してもらうの悪いじゃん?」
その言葉にちらりと壁にかかっている時計を見ると、日にちが変わるまであと30分を切っていた。たしかに。
このまま電話を続けていても仕方ない。
また夢もはやく寝たいだろうし、覚悟を決めて息をつく。
「……わかった。早く来い」
「ありがとうスクアーロ!大好き!」
はしゃいだ声のまま言って、ぷつりと電話が切れる。
また夢は簡単に大好きとか言う奴だって分かってても心臓に悪い。
畜生、俺は耐え切れんのかぁ?
よりにもよってこんな危険人物を選びやがって……!
あれー?スクアーロ寝ないのー?
あぁ。今日はいい(つか寝れそうもねぇし)
えー、一緒に寝ようよー
(!!)いい子は早く寝ろぉ!!
さみしいよーせっかくのお泊り会なのに
(こいつは…!!)…どうなっても知らねぇぞ
うん?なにするの?
…楽しいコト、だ