お昼休みに野球部の友達と話していると、ものすごく不機嫌そうな準太が寄ってきて、無言のまま手を引かれた。



「ちょ、ちょっと、準太、どうしたの?どこ行くの?」

「…………………」



なんだか怒ってることだけは、伝わってくる。
準太前向いたままで表情はわからないけど握られた左手は、正直痛い。
なにも利き腕の右手で掴むことないじゃん。痛いんだから!


準太はいつも大概笑っていて穏やかだから、たまにこういう風に怒ったりするとすごく怖く感じる。
どうして?なんで準太怒ってるの?

なにもわからないまま着いていくと、連れて行かれたのは誰もいない屋上。
春先とか夏場は人がいっぱい来てるけど、さすがにこの時期になると寒くて人気がない。



「……準太?」



急に手を離されて、不安になって名前を呼ぶと、ゆっくりと不安そうな瞳をした準太が振り返る。

怒った顔をしているのかと思ったから、そんな準太の顔を見たらどうしていいのかわからなくなる。
本当に、どうしたんだろう。準太のこんな顔、はじめて見た。




「………あんまり、あいつらと仲良くすんなよ」

「あいつらって、私が話してた、?」

「その、野球部の奴らとか、クラスの奴とか、」

「そんなの、無理だよ…」



準太が仲良くする野球部の人達と私も仲良くするのは彼女として何度も応援とか行ってたら避けられないし、クラスでは隣の席の前田くんにはよく教科書見せてもらったり。



「準太、もしかして……嫉妬?」

「…………………………」



ふ、と思ったことを口にたら、予想外の準太の反応。

嫉妬するのは、私だけかと思った。
いつも可愛い女の子達からたくさん差し入れとかもらって、告白の回数だって数知れない。バレンタインのチョコ獲得数はダントツで一位だし。
だから嫉妬なんてするのは私だけだと思ってたのに、まさか準太が嫉妬、するなんて考えたこともなかった。



「………わるいかよ」



弱々しくいう準太がなんだか可愛くて、もう少しだけいじめたくなる



「まったく、準太があんな風に私が野球部の人と話してる時に来たら、あっちだって怯んじゃうでしょ?」


エースなんだから、と最後に付けると不意に準太の瞳がいたずらに揺れた



「そうなんだ」

「え?」

「いや、そうか、そういう使い方もあるのか」

「じゅ、じゅんた?」



なんだか余計な事を教えちゃったみたいで、準太は嬉しそうに笑っている。

この男は、自分が大所帯で伝統のある野球部のエースを二年生でまかされてる、っていうすごさに気づいてなかったのか。
後輩からはもちろん同じ二年の野球部の人から見ても準太は憧れそのものだ。三年生の先輩だって、みんな準太を評価してる。
だからそんな準太が、私が他の野球部の人と話してる時にあんな入り方をしたら相手は怖がっちゃうっていうかなんていうかとにかく遠慮するのか、引いちゃう。

なのにそれに気づいてなかったなんて。まぁ準太らしいって言えば準太らしいけど。


少し寒くなってきたな、と思っていると不意に優しく掴まれる左手。さっきはごめん、痛かった?なんて優しく聞かれたら文句も言えない。


しばらくは、なるべく野球部の人とかと仲良くじゃれるのはやめよう。まぁ、私がそうしなくてもあっちが準太の事気にして寄って来ないと思うけど。


「とにかく、他の野郎と仲良くすんの、禁止な」



それに、こんなに甘く囁かれたら私は抵抗できない。



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