任務ともなればどんなに山奥深くでも出向かなきゃいけない。
だけど、こういうハードな任務は女は外したほうがいいと思うんだよね。
どうしたって体力は男に比べて劣るし、いろいろとつらい物がある。

なんでか知らないけど小隊に入れられた私と、もう一人の女隊員は、周りの男達に比べて明らかに体力を消耗していた。

普段から男に負けないように訓練を積んでいる私でさえつらいんだから、見るからに華奢な新人の女隊員は本当につらいと思う。

とうとう地面に膝をついた彼女の細い肩を柔造が支えてあげている。
もう立っているのもつらいんだろう。
彼女は苦しそうに呼吸をして、可愛らしく柔造にお礼を言っている。

だけどそれを見て、自分の体調を管理できる自分に嫌になる。

私も、少し光が目に痛くなってきて、視界が白ばんできたから、これは貧血おこす手前だな、と冷静に判断する。
彼女みたいに倒れるまで歩く、なんて無様で迷惑な事できない。

ここで私もあの子みたいに倒れでもしたら、柔造が心配してくれるのに、なんて。
そんな考えは、醜い。私には、プライドが邪魔してできない。


「ごめん。私少し用足してくるから先あがってて」


近くを歩いていた人に言い、一人隊列を抜けて、充分距離を取って藪の中にぺたりと座り込む。


上手に笑って伝えられていただろうか。
服が汚れる事すら気に出来ないほど、眩暈が酷くなってる。
目を開けていることすらできないで、大きな石にもたれ掛ったまま手で覆った目を閉じる。
いまごろ柔造はあの女の子を支えて、山を登っているんだろうか。
あの逞しい腕で、華奢な腰を支えてあげながら…。
頭の中がぼやけて、吐気がする。
水、飲まなきゃ…。

鞄を目を閉じたまま漁っていると、「ほら」と言って水筒を渡される。
その冷たい感覚と聞きなれた声に勢いよく顔を上げれば、反射的に痛む頭。


「っ、」


くらり、として、手で地面を掴んで踏ん張ると、よく知った腕が私の肩を支えた。



「ど、して…」

「具合悪いなら言えや」

「大丈夫、だもん」



こんな時にすら可愛くない態度を取っちゃう自分が嫌だ。
同時に、こんなに体力の無い自分にも。
実際他の男どもは柔造を含めてなんなくこの山を登っている。特にこの山男は体力を持て余しているようにも見えて腹が立つ。



「大丈夫な奴はこんなとこで座り込んでへんやろ。女なんやから、無理すんな。心配する」



ゆっくりと私の額に浮かんだ汗を拭ってくれるその仕草は、優しくて、愛おしくて。


なんであの子を支えてあげないの?とか、なんで私が具合悪いの分かったの?とか、聞きたいことは沢山あったけど、余計なことは口に出さないで、ゆっくり柔造とこの山を登って行けばいいのかな、と色の戻って来た思考で思った。


甘えられない私をゆるして

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