目の前に広がる光景を見て、今日学校を休まなかった自分を心から恨んだ。



「ありえない………」


校門から校舎まで敷かれた赤い絨毯に、その周りを覆い尽くす勢いで置かれた深紅の薔薇、バラ、ばら。

遠くの校舎には昨日の放課後までは絶対なかった横断幕がかかっていて、大きな文字で「happy birthday また夢」と派手に書かれている。
…どんな罰ゲーム?


頭を抱えて座り込みたいのを抑えて冷静に周りを見ると、あきらかに周りの生徒はひいてるし、不自然極まりない絨毯と薔薇を遠目にみながら、そそくさと去って行く。
っていうか、



「私の誕生日を糞部に教えたの、誰だコラ」


校門の横に立っていた忍足と岳人を睨みながら低い声で言うと、糞眼鏡はあきれながら、糞おかっぱは申し訳なさそうに笑った。



「よけいなことしてんじゃねぇぞこの腐れペアが」

「まぁまぁ。しゃーないやん。女の子がそないな言葉使ったらあかんで」

「…ごめんな、プレゼント買ってるところ跡部に見られちゃってさ」



ロリコン野郎を殴り倒すことを心に固く誓って、がっくんから差し出された可愛くラッピングされた袋を受け取る。

プレゼントはいらなかったし、どういう反応をしていいのか分からないけど、がっくんに罪はない。


「ありがとう…。来年はなにもいらないからね」



そっとしておいて、と言うとがっくんはまた申し訳なさそうな顔をする。

がっくんには悪いと思うけど、本当に苦手なんだ。
祝われるのとか、プレゼントを貰うのとか。どう反応していいのか分からない。上手にリアクションが取れなくて、嫌になる。
というか上手いリアクションは芸人にでも頼んでください。私に期待しないでください。


受け取ったプレゼントを鞄に入れて、あほみたいな絨毯からなるべく距離をとって校舎へ向かう。

こんなアホなことするのは奴しかいないのは明らかだ。
一発殴るか、ほくろをつねるか考えながら歩いていると、前方からアホ部が絨毯の上を肩で風を切って歩いて来た。そして、私を確認したとたん、絨毯を降りてこっちに向かってくる。



「なんでそんな端歩いてんだよ。今日はおまえの日だろ?堂々としろ!」

「本当にもう勘弁してください…。」



あまりにも空気の読めていない発言にげっそりしながら言うと、あほな頭の作りをしたくそキングは見当違いの事を言い出す。



「なんならこの国のカレンダーの今日という日におまえの名前を刻んでやろうか?」


ん?どうしてほしいんだ?と聞かれてさらにげんなり。
こいつ、みんながみんな自分みたいにナルシストだと思うなよ。


つらつらと私の欲しい物を勝手に考えて言い並べる跡部を見ながら、もう本当に家に帰ろうか、と遠く考えた。




「ホテルを貸し切ってパーティ、ジェット機に乗って夜景を眺める、世界旅行…は明日も学校だから無理だな。いまから近隣の国に遊びに行くか…。どれがいい?」

「帰りたい」




これもこいつの大きすぎる愛の形、だなんて、私には割り切れないよ。

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