雨が音もなく地面に落ちて行って、消えて、また新しい粒が降ってくる。
朝から曇ってた空は昼頃には雨を降らせた。
あぁ、今日の部活はねぇな。
自主練だけしてくか。
ぼーっと考えながら、現代文の教師の言っていることを理解しようとするけど、うまく頭に入ってこない。
雨の日は脳の動きが鈍る、気がする。
身体もなんとなく重くなって、うざったいことこの上ない。
なんとなく隣に視線を移すと、隣の席のまた夢が寝ていることに今 気づいた。
すやすやと、それはもう気持ちよさそうに寝ているこいつを見て、いつのまにか寄っていた眉間のしわが消えるのがわかった。
細い、筋肉なんてまったくない腕に頭を乗せて寝ているまた夢。
なぜかこいつが寝る時は絶対俺の方を向いていて、それが癖なのかなんなのかわからないけど、それが無性に嬉しかったりして。
「ぅ、……ん」
むにゃむにゃ、と僅かに身じろぎしながらも、まだ寝続けるまた夢。
そういえばいつだったか雨の日は深く眠れる、って言ってた気がする。
雨が地面を叩く音が、気持ちいんだとか。
今日の自主練はなるべく早く終わらせて、こいつに待っててもらおうかな。
待ってろ、って言ったら嫌だとは言わない奴だ。
そうしたら、一緒に飯でも食って、こいつの好きなアイスを食いながら送って行こう。
そうだ。そうしよう。
今日丁度傘を忘れたから、それを理由にすればいいんだ。
今日の放課後の計画を立てながら、またまた夢の顔を見る。
薄い瞼はまだ閉じられていて、いつも無邪気に向けられる瞳は見えない。
あぁ、早く目を開けろよ。そんで、俺の事みろ。