「スクアーロは、殺すよ」

「…なんだぁ?急に」



任務もないし、やかましいベルもちょっかいを出して来ない夜、本を読みながらソファーに座っていたまた夢が急に口を開いた。




「スクアーロはさ、きっと殺しちゃうんだよ」

「だから、なんの話だよ」



聞き返しても掴みどころのない言葉を繰り返すだけでさっぱり話が読めない。

俺が殺す?誰を?




「だからさ、もし私が浮気したらの話」

「浮気ぃ?」




好ましくない単語の響きに自分の眉がつり上がるのが分かる。



「おまえ、浮気してんのか」

「“もし”って言ったでしょ」




低い声で問いただす俺をあきれたように見ながらまた夢が言う。



「きっとさ、スクは私を殺さない」

「…………………」

「でも、その相手の事を殺すんだろうね」



また夢の言ってることは、多分、正しい。
実際そうなってみないとわからないかもしれないけど、九割以上の確立で当たってる。




「そうだなぁ。…俺にまた夢は殺せねぇ」

「殺せないんじゃなくて、殺さない、だけでしょ」



正直に言うと、また夢のなんでも分かってるような瞳が向けられて、少し考える。


殺さないだけ、か。

たしかに、そうかもしれない。

だけど、やっぱり違ぇ。



「いや、俺はおまえを殺せねぇよ」



殺すことはおろか、傷つけることもできない、と続けるとまた夢はおもしろくもなさそうな顔でそう、と呟いた。















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