※アンジェリーナ視点



「私を見降ろさないこと!」

「そりゃ無理な話だよ!ホグワーツに一体何人また夢より背の小さい人間がいると思ってるんだ!片手で足りるよ!」

「うるさい!私は見降ろされるのが嫌いなの!私と喋る時は座るかしゃがむように」






「…なにあれ?」

「んー?相棒が愛しのまた夢と付き合うためのルール制定だってさ」

「…なにそれ?」



退屈な午後の授業が終わってやっと寮の談話室に帰ってくると、真っ先にまた夢とジョージの会話が聞こえた。

ソファーに長い身体を沈めながら呑気に片割れを眺めてるフレッドに説明を求めるとさらに混乱する。


ジョージがまた夢のことを好きなのは知っていたし、また夢もずっと知っていた。
なぜかって?ジョージが毎日毎日伝え続けたから。

朝一番のジョージのまた夢への告白は名物になるくらい定着した日課だったし、それを軽くあしらうまた夢もまた名物だった。


しつこく付きまとわれたまた夢が根負けした、って感じね。




「それと、人前で無駄にべたべたしないで」

「また夢といちゃつくのは無駄じゃない!俺にとっては必要なことなんだ!」

「暑苦しいし、周りに迷惑でしょ!自重して!」

「そんな…!」




容赦なく突きだされる条件にジョージがあからさまにショックな顔をするけどまた夢はそんなこと全然気にしないみたいだ。
なるほど、ああいう毅然とした態度で立ち向かえばこの手に負えない双子もいうことを聞くのね。勉強になる。





「条件多いよ、また夢…。俺、覚えきれないかも」

「あら、私の言葉を忘れちゃうの?薄情ね」

「!!そんなわけないだろ!また夢の言葉は全部、一字一句覚えてるよ!」

「それじゃあいまままで言ったルールを繰り返してみて」




ジョージは少し拗ねたように言って同情を引こうとしたけどまったく効果無しで、いつのまにか手玉に取られてうなだれながらルールを呟いている。




「また夢が勉強してるときは邪魔しない、朝は部屋に忍び込まない、」

「朝だけじゃなくて、いつもね」

「…いつも部屋に忍び込まない、授業をさぼってまた夢に会いに行かない、えーっと、また夢の部屋をプレゼントで埋めない、それとー、」





「…いったいいくつあるの?」

「まさか俺がカウントしてるとでも?俺だったら絶対無理だね。あんなルール制定する彼女なんて」

「それはまた夢の悪口か!?いくらおまえでも見逃さないぞ!また夢はこの世のどの子とも比べられないくらい愛らしくて、優しくてまさに女神のような子なんだぞ!」

「ちょっとジョージ!“恥ずかしいことを言わない”もルールに追加ね!」

「なにが恥ずかしい事なんだい?俺はただ本当の事を言ってるだけだ!」

「女神とか、妖精とか、花のような可憐な姿、とかよ!」

「それのどこが恥ずかしの?」

「ベリーパイを食べながら“きっとこんなパイよりもまた夢の唇は甘くておいしいんだろうな”とかか?」

「あなたの笑ってるところを見て“彼女の微笑みはとろけるようなんだ。彼女が笑うだけで世界は平和で幸せに浸かる”とか?」

「フレッド!アジェリーナまで!!」




真っ赤に顔を染めながら喰ってかかるまた夢が可愛くてつい便乗してからかうと頬が赤いまま困ったように私を見るから、さらに可愛い。



「また夢、頬がいちごみたいになってるよ?…いや、唇のほうがいちごっぽいか、……たべてい?」

「いいわけないでしょ!」




ジョージが頬に手を添えて甘えたように聞くと顔をさらに赤くして必死にもがくまた夢を見て、私の口元もゆるむ。

なんだ、てっきりジョージばっかり好きなのかと思ったけど、違うみたいね。

いいカップルじゃない。





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